有美子 Pipe(ゆみこ・パイプ)
名古屋市出身。英語習得のために渡加し、カムループスのカレッジで学ぶ。ケローナで移民関係の団体で秘書をした後、老人施設のケア・エイド時代に仕事に対する忠実な姿勢が買われ、Canadian Cancer Society(カナダ癌協会)の宿泊施設で調理担当者として採用される。同協会で実力が認められ、スーパーバイザー、そして、現在はマネージャーとして活躍している。

 

有美子 Pipeさん

 

 

—カナダに来たきっかけ

日本では、子どもに英語を教えたり、ケーキのケータリング、栄養士などをしていました。英語が好きで、常に勉強していましたが、日本にいてはなかなか上達しないので、海外で勉強をすることを思いつきました。数々の英語圏の国へ行きましたが、カナダが一番自分に合っていると感じて渡加しました。カムループスのカレッジでESLとビジネスを学んだ後にケローナに引っ越し、移住者や移民のお手伝いをする団体で秘書として働きました。

 


—カナダでの職歴

日本で取得した栄養士の資格を活し、ヘルスケア施設での食事管理に関わる仕事に就きたかったのですが、残念ながら、日本の資格はカナダでは通用しませんでした。カナダで改めてその資格を得ることを考えましたが、いろいろな面で難しいと分かりました。それでも諦めれきれず、まずは、食品やヘルスケア関連の仕事の経験を得るためにフード・セーフ(基本的な食品の取り扱いの知識を得る)の資格を取りました。そして、スーパーマーケットのデリやシニア施設のケア・エイドとして働きました。

 


—今の仕事に就いたきっかけ

その老人施設の同僚に、カナダでヘルスケア施設での食事管理に関わる仕事に就きたいという夢を話しました。すると、彼女が以前働いていた、カナダ癌協会の宿泊施設で調理師を募集しているという嬉しい情報を得ました。シニア施設のマネージャーに推薦してもらい、同協会で調理師として雇ってもらえることになりました。私はカナダで料理学校に通った経験はありませんので、周囲に技術の差を感じさせないように努力し、すぐに仕事に馴染みました。いろいろな種類の薬品を使って掃除や除菌をするハウスキーピングやキッチン作業をする職場では、取り扱いを間違えると有害物質の発生等が起きるので、重要なWHMIS( 仕事場での危険な化学薬品についての有害性周知プログラム)の資格を取得しました。また、ファーストエイド(応急処置の資格)も取りました。

 


—今の役職に至った経過

調理師時代から惜しみない努力をし、シェフ・マネージャーにいろいろな提案を持ちかけることにより、実力を認められるようになりました。その後、スーパーバイザーとして、彼女が不在時の監督を任されるようになり、彼女が退職時に後任者として立候補しました。現在は、この協会のシェフ・マネージャーとして、がん患者の食事作り、メニュー構成、ハウスキーピングの管理などをしています。シェフ・マネージャーに就任してから、同協会で義務付けられている上級のフード・セーフの資格(さらに細かい内容で、温度管理や具体的な食品中毒の症状などの知識を習得)も取得しました。公の人に食事を提供する調理場では、この資格の保持者がいることがカナダでは義務付けられています。また、食中毒や病気の感染が発生してしまっては業務停止になりますので重要な知識です。

 


— 日本の栄養士の資格がカナダで活かされる

上級のフード・セーフに関する知識習得は、日本で食物栄養を学んでいたことが礎となっています。また、症状の異なる患者さんに適した献立を考えたり、調理の仕方を変えるという点では、文化の違いを問わず、日本の食物栄養学や病院で学んだ知識が大いに役立っています。

 

 

カナダ癌協会のシェフ・マネージャーとしてユニフォーム姿で自室(オフィス)で勤務中の有美子さん

 

 


—職場について

カナダ人のワーカーの生活の中では、日本人と比べて仕事の比重が低いと感じます。そこで仕事に対して発破を掛けようと、彼らなりの努力を評価し、感謝と尊敬の意を表すように常に心がけています。また、彼らは私が上司であっても物怖じせずに発言してくるので、自信を持って白黒はっきりした意見を呈することによってチーム・リーダーとして頼りにされてきています。

 


—これからの抱負

老若男女問わず、努力すれば認められるという利点があるカナダの社会。これからもカナダで認められ、更に上の地位につけるように頑張っていきたいです。

 

仕事の実力を向上させるために惜しみない努力を続けている有美子さんのこれからが楽しみである。

 

(取材 北風かんな)

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