カナダで活躍する日本人バレエ・ダンサー


齋藤浩人(さいとうひろと)
神戸市出身。地元神戸市の貞松・浜田バレエ学園で7歳からバレエを始める。15歳の時に英国のイングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールに留学する。3年間の学生生活を経て、中国特別行政区にある香港バレエへ就職。同団所属中にコールド・バレエ、コリフェを経てソリストに昇格。2007年よりカナダ・バレエ・ヨーガンへ移籍し舞台で活躍している。

 

齋藤浩人さん近影 photo by Cylla Von Tiedemann

 

 

—カナダに来たきっかけ

現在所属しているバレエ・ヨーガンの芸術監督のヨーガン氏と香港バレエ所属中にお会いして、彼の振付けによる作品の主役を頂きました。これは香港バレエに所属して2年目、まだコールド・バレエ(群舞)の一員だった時のことでした。ヨーガン氏がダンサーとしての自分の能力を高く評価して下さって感激しました。香港に8年間も滞在したので新しい国や都市、バレエ団で仕事をしたくなり、バレエ・ヨーガンへの移籍のため渡加することになりました。

 


—趣味や活動

趣味は映画鑑賞と料理です。現在、車の免許を取る為に公演の合間に運転の練習をしています。

 


—バレエ・ヨーガンの公演の演目について

今シーズンは10月の初めに『フォーメーション』という五つの小作品をトロントで公演しました。毎年冬は『くるみ割り人形』のツアーでオンタリオ州を回っています。『ロミオとジュリエット』の公演が今シーズンのメインです。 シーズン後半の演目『バレエ・イン・ザ・スタジオ』はトロントにあるバレエ・ヨーガン本拠地のスタジオで、上記の中から抜粋した作品や、 現在リハーサル中の作品群を公演。新しいダンサー達が、お客様の前で踊ってみる機会でもあります。


—バレエ団のオフシーズンの過ごし方

オフシーズンは5月半ばから8月半ばまでです。2年前からバレエ・ヨーガンのサマー・スクールで5週間ほどバレエを教えています。  去年はマレーシアのダンサーから招待を受け、3週間バレエマスター(毎日クラスを教え、プロジェクトで発表される作品のリハーサルを担当する)をしました。作品の振り付け師としても活動でき、とても意義ある時間となりました。  日本では、知人のバレエ学校にマスター・クラスを教えに行ったり、都合があう時にはバレエ学校の発表会等にゲストで出演しています。

 


— 『ロミオとジュリエット』での主役ロミオの役作り

以前、08-09年シーズンにもロミオ役を頂いたので、今回で2回目です。最初に演じた時は原本を読んだり、自分なりのロミオ像を想像して役をつくりました。今回は公演までの準備期間が2週間しかなく、1回目のロミオ役の体験から得たことや芸術監督とのリハーサル中での会話、また、バレエ団で演技の指導をしている演劇コーチとも話し合いながら役作りをしました。自分の感覚を大切に、そして、彼らの意見も参考にしながら、あまり力まないで踊っています。

 

 

ロミオ役として踊る浩人さん photo by Charlene McIntosh

 

 


— これからの抱負

バレエはパフォーミング・アーツです。テレビやユーチューブなどの映像とは違って出演者の醸し出す空気や雰囲気に直に触れることができます。そのような場で踊れることに喜びを感じています。 33歳になり、バレエ・ダンサーとしてのキャリアの後半にきていると自覚しています。どんな舞台も疎かにしないよう、踊ることを何よりも大切にしたいです。

 

ツアー中は健康管理に留意しながら、その土地の街並みや空き時間に訪ねるアート・ギャラリー観覧などからインスピレーションを得ている浩人さん。BC州のツアーに訪れたバレエ・ヨーガンの『ロミオとジュリエット』のバーノン公演はチケットは完売。二時間半に及ぶ悲恋物語の世界の素晴らしさに観客は息をのみ、大喝采を送っていた。これからの浩人さんの活躍が期待される。

 

(取材 北風かんな)

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