2017年3月16日 第11号
「私こんな会社、もう辞めます」。一ケ月半前にアルバイトで入ったみどりさんは悲しげに、そして期待外れの会社に愛想を尽かして退職を決意したようです。
「まだ、入ったばかりなのだから、もう少し我慢していたら…」と私はなだめました。
「でも○○さんが結構きついんですよ…。私のこと目の敵にしているのか、いつも怒られてばかりです…。一回教えただけで、まだ覚えていないの?って言われても、一回聞いただけじゃ覚えられないですよ…。折角受かったと思ってワクワクして入社したんですけどね…」。
どの人も多かれ少なかれ退職者を見送ったり、辞めていくなどの経験をお持ちではないでしょうか?入社試験を受けた頃は、誰しも合格したいと願い、何らかの希望を持って入社してきたはずなのに、辞めていく人のほとんどが「こんな会社」と言って辞めていきます。
そもそも働きにくい職場環境を作っているのは、どなたでしょうか。また、どのような環境が働きにくいと感じさせるのでしょうか? そしてそれは解決できないことなのでしょうか?
原因は大きく分けると7:3の割合で2つあると思います。
一つ目は7割が経営者側の問題で、スタッフ教育のシステムが構築されていないことが原因です。4月入社の時ならば人数が多いので研修がしやすいと思いますが、その後の中途採用者になると疎かになってしまうものです。ましてやアルバイトともなると、ますます指導しなくなります。主な原因は、教える時間がない、教える人がいない、教え方がわからない等です。そうなると、経験者と新人の間が乖離してしまいます。
二つ目は3割の責任で新人本人の問題です。 最初のうちは言われた通り動きますが、一人でやらせようとすると動けない人がいます。その時、運良くいい先輩に恵まれてイヤな顔をせずに教えてもらえるといいのですが、忙しさでタイミングが悪かったり、聞く相手が悪かったりすると厳しい一言が返ってくることがあります。できない自分を素直に改善する精神力を持っている人ならばいいのですが、落ち込んでしまう人が多いようです。あなた自身の問題であっても、周囲のスタッフはあなたが気にかけていることを知りたいものです。
解決策として、経営者や責任者が会社を立ち上げる時に、アクシデントの対応として中途採用者の教育システムを決めておくことが必要です。また細かいことですが、どの作業にどれくらいの時間がかかるのか、大体の目安を立てておくことも大切です。これは新人が早くベテランレベルに達するために効果的です。
また新人もわからないからと言って、教えられるまでただボーッとしていてはいけません。とにかく聞く。今、何をすればいいのですか? 次は何をすればいいのですか? 今、先輩は何をしているのですか?
伸びていく人、好かれる人は積極的に話しかけていきます。人は話しかけられると必ず答えてくれます。「一度や二度怒鳴られるのは当たり前と考え、言われる前に自ら進んで質問しましょう」と教えておいてはいかがでしょう。
どの立場の人にも、今の環境を良くすることが自分自身の課題だと理解することが、前に進みやすくさせます。
(文 福本 衣李子)
読者の皆さまへ
長い間、お読みくださいまして誠にありがとうございます。 この3月末で、日本に帰国することになりました。 バンクーバーでは、新聞を通して多くの方々とお知り合いになれましたこと大変うれしく思います。
また時折、「記事を読んでいます」と言われることがあります。そんな時、拙い私の文章でも、読者の方々のためになんらかのヒントになってくれていたらいいなぁ〜、と思うことしばしばです。
日本では、こちらでの経験を生かし、スタッフ教育や人材育成に尽力して参りたいと思います。
また引き続き投稿させていただけることになりました。 次回は5月第3週目、日本から発信させていただきます。 今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
オフィスRan 代表 福本衣李子
著書紹介
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福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。