2017年1月19日 第3号

 私が拙著を書き上げるまでには、長い道のりがありました。執筆など全くのど素人。

 高校生の時が最高記録。弁論大会の時に原稿用紙5枚を書き上げたのが自慢でした。いつもは2枚半がほとんど。その記録を上回ったのですから鼻高々でした。この一言で如何に私が文書を書けなかったのか、おわかりになりますでしょ!

 そして書き上げるまでには、途中仕事が入ったこともあって5年もかかってしまいました。書き始めたころは、書くことに行き詰まると、ウォーキングに出かけて気分転換をします。そうして外からの刺激を受けてキーワードを見つけてまた書き始めるのです。

 しかし30分もすれば飽きてしまい、すぐにパソコンから離れていました。それでもテーマを決めて、書き慣れてくると8時間も書けるようになっていました。書くことが面白くなってきたのです。

 もちろんはじめからうまく書けていたわけではありません。自分ではうまく書けたつもりでも第三者からみれば、意味不明の表現もたびたび。それを根気強く修正してくれた仲間に大いに助けられ、本ができました。そんな文章書きヨチヨチ歩きの私が書いた拙著の紹介をさせてください。また本書で書ききれていなかったことや接客のことなども加えてご紹介いたします。  

 私には3人の娘がいます。一般的に子育てに手が離れる頃、次は学費がかかるようになるものです。私も例外ではありません。私はタイミングよく元の上司に声を掛けていただき、帝国ホテルの子会社で働く機会を得ました。  

 1999年。その頃はバブルの後遺症といわれていた時期で、テレビのニュースでもあちこちの不景気を取り上げていました。その頃都内にあるホテル内の和食店で働いていました。連日ランチは2回転半、ディナーは1回転半という盛況で予約でいっぱいでした。どうして私の職場はこんなに忙しいのにテレビは不景気だなんて嘘のことを言うのだろう? テレビなのに困ったもんだ。と社会情勢に疎い私は不思議に思っていました。 

   そんなある日「いつ来てもこのお店は混んでいるねぇ。他のお店は閑古鳥が鳴いて困っているというのに…」。

 はじめはただのお世辞と受け止めていました。ところが同じようなことを度々言われるようになり、振り返ってみると「予約が取れない」とお客様から叱られ、しょっちゅう謝っていました。  

 でもどうして混んでいるのか…。そこで改めて考えてみると、私が20年前に帝国ホテルに入社して学んだことをそのまま実践していたことに気づいたのです。

   グランドオープンしたこのホテルは半官半民で、3社からスタッフが集められ運営をしていました。オープン当初はスタッフ間の意思疎通がうまくいかず、お互い他人行儀のような仕事をしていました。私自身も始めから責任者になったわけではありません。まだ末娘が5年生だったため中学に入るまでは時期が早いと思い直しました。あこがれの女将を断ることは苦渋の決断でした。しかし、私の帰宅が遅いことで娘が非行にでも走ってしまったら取り返しのつかないことになる、また子供はいずれ手が離れる時期がくる、と、自分に言い聞かせのです。そしてランチタイムのみで働かせていただきました。これが後々大正解になるとは夢にも思いませんでした。

(続く) 

(文 福本 衣李子)

 


著書紹介
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お客様の心の声をいち早く聞き取り要望に応えリピーターになりたくさせる術を公開。小さな一手間がお客様の心を動かす。ビジネスだけでなくプライベートシーンでも役立つ本と好評。〜$18にて販売中〜

セミナー紹介
2016年9月よりお箸の持ち方、「5つの箸使い、割り箸の4つの所作を教えます」のセミナーを開始。毎週木曜1時間。1時〜と5時半〜(全4回)。
1回$30(割引:4回分一括前納は$80)それ以外の時間でも可。連続での受講も可。修了証を差し上げます。 申し込み方法はThis email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.まで。

 

 

福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

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