2017年1月1日 第1号

新年あけましておめでとうございます。ことしもみなさまに幸多い年になりますように心から祈念いたします。   

 1月1日、この日は1年で最初の晴れの日。その年の年神様をお迎えして、家族の繁栄を祝う日です。晴れの日とは働かなくてもいい日です。晴れ着を着て遊んでおいしいものをいただく日です。そのために料理は前もって重箱に詰めたものをいただきます。 

 日本では毎年、どの新聞でもお正月や縁起ものの食材の意味合いなどが掲載されています。今さら言うまでもないことをあえて取り入れる目的は、やはり子々孫々受継いでほしい行事だからですね。それに何よりお正月の意味合いには、人々が幸せになるための「いわれ」があります。再確認の意味で、列記してみました。   

●お正月の意味:昔の人は祖先の霊が田の神や山の神になり、正月には年神となって、子孫の繁栄を見守ってくれるのだと考えていました。そこで、たくさんの幸せを授かるために、年神様をお迎えしてお祝いする様々な風習や行事が生まれました。また、大晦日に寝ないで新年が明けるのを待つのは、真っ先に年神様をお迎えするためです。 

●年越しそば:大晦日の晩に蕎麦をいただく風習は江戸時代から始まりました。調べてみるとお蕎麦には3つのいわれがあることがわかりました。 
①伸ばした生地を細長く切って食べることから、長寿の縁起をかついだもの。 
②他の麺に比べて切れやすいことから悪縁や災いを断ち切れる。 
③金細工職人が仕事場に飛び散った金粉を、そば粉を練っただんごで集めたことから「蕎麦は金を付ける」金運upという意味もあったようです。 
お蕎麦には、このような「幸せを呼び込む」いわれがあったなんて、これは是が非でもいただかなくてはなりませんね。    

●おせち料理:おせち料理は年神様へのお供え料理であり、また家族の幸せを願う縁起ものの料理でもあります。五穀豊穣、子孫繁栄、家族の安全と健康などの祈りを込めて山海の幸を盛り込んで作ります。  そこで、素人さんには一見難しそうに見えるお重の詰め方をご紹介します。詰め方のひな形がわかれば、おせちにも興味がわくと思います。 

3種類の詰め方のご紹介

市松詰め:9種類の料理を詰めることができます。隣の料理に味や色が移らないように笹や葉蘭などできちんと仕切ます。そうすることで見た目もすっきりと美しく仕上がります。 

 

段取り:料理の種類や切り方の大小によって三段か五段に。横一列に盛ります。尾頭付きなどは一番奥に。切り身なら中央あたりがベストです。 

 

七宝:まず中央の物を決め、四方に4点か6点の料理を配置します。高価な伊勢エビなどを中央に盛ると見栄えがします。 

 

そして、中に入れる料理の数は必ず奇数にします。なぜなら日本は奇数を尊ぶ文化だからです。ちなみに中国は偶数を尊ぶ文化です。   

 

<ワンポイントテーブルマナー> 

●重箱から銘々皿に移していただくときの注意点 
もてなす人:  重箱の中の料理が人数より足りないとき ⇒例えばアワビなど、前もって人数分に切り分けておきます。数が足りないものはなかなか手が出しにくいものです。一口だけでも味わっていただき、共通の話題を欠かさない配慮がもてなしの達人です。 
もてなされる人:  複数でいただく場合、自分の立ち位置を再確認します。我先にと手をだしませんように。譲り合いの精神がその場の雰囲気を和やかにします。また、お酒が入れば時間の経過と共にマナーもつい、うっかりしてしまいがちです。周囲を不快にさせてしまうのは、直箸で直食いをしてしまう行為です。やはり、最後まで始めと同じいただき方を貫きましょう。きちんと取り箸で取り皿にとってからいただきます。   

●「西郷隆盛 豆のお話」 
ある日のこと、西郷隆盛と初めて面会した人は、「これがうわさの西郷か。どれほどの男かいただき方で本性を見抜いてやろう」と西郷の挙動をじっと見つめていた。やがて茶坊主が茶と豆を運んできた。西郷ほどの豪傑、食べ方もさぞや豪快だろう、と思いつつ「どうぞ」と促した。「ではお先にいただきます」と西郷が手を伸ばす。すると、西郷は豆をひとつまみし、それを左の手のひらに乗せ、右手で一粒ずつ大切なものをいとおしむように食したという。その様子をみて相手は、「几帳面で気遣いがきちんとできる男だ」と西郷を高く評価したそうです。   

●初対面など言葉だけではまだ、相手を信用するのは難しい時期、日常生活での食事の仕方を参考にすると、判断基準に役立てられる、という良い事例ですね。   

●縁起をかついだ料理名
【数の子】数の子はニシンの卵。二親(にしん)、ふた親から多くの子が生まれますようにと、子宝と子孫繁栄を祈願。 
【えび】腰が曲がっているので、それにちなみ腰が曲がるまで長生きすることを祈願。 
【田作り】五穀豊穣を願い、 小魚を田畑に肥料として撒いたことから名付けられた。小さくても尾頭がついているところが魅力。 
【昆布巻】「こぶ」は「喜ぶのよろこぶ」の言葉にあやかって、正月の鏡餅の飾りにも用いられている一家繁栄の縁起もの。 
【黒豆】「まめ」は元来、丈夫・健康を意味する言葉です。「まめに働く」などの語呂合わせからも、おせち料理には欠かせない料理です。 
【紅白なます】生の魚介と、大根、にんじん、酢で作ったことから、なますの名がつけられました。今は生の魚介の代わりに、干柿や昆布、ゆずの千切りも用いられます。また赤い色の食べものは邪気を払うとされ、白は清潔さを表し、神聖なる物の意味があります。 
【栗きんとん】黄金色に輝く財宝にたとえて、豊かな1年を願う料理。山の幸の代表、「勝ち栗」と呼ばれ勝負運を願った縁起もの。 
【小肌粟漬】小肌はコノシロという魚の成魚になる前の名前。出世魚なので縁起がよい。 
【ごぼう】細く長く地中にしっかり根を張るごぼうは縁起もの。たたきごぼうは、茹でたごぼうを叩き、身を開いて、開運の縁起をかついだもの。 
【祝い箸】お正月に使うお箸です。厄を払うといわれる柳で作ります。両方の先端が細くなっているのは、一方を年神様、もう一方を人が使い、年神様と食事を共にするという意味があります。 

 

以上、お正月料理のいわれをご紹介しましたが、私たちの先祖は日常生活の中に人々が幸せになる知識を盛り込んでいたのですね。これからもみなさんと共に後世につなげていきたいですね。   

 

【参考文献】
紀文のお正月 お正月のいわれ 
日本人のしきたりと正月:作家 飯倉晴武 
江戸文化と和の暮らし元 江戸東京博物館館長 竹内 誠 
豆知識 PRESS 
島根県大田市出雲市の住宅 社長のブログ知らぬは一生の恥、食事マナーと箸使い  

(文 福本 衣李子)

 


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福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

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