2017年8月17日 第33号
アメリカで80歳以上の方に「人生でもっとも後悔していることはなんですか?」というアンケートを実施したところ、なんと7割の方が同じ回答だったという興味深いデータがあります。回答は「もっと思い切って冒険すれば良かった」。人はやったことでなく、やらなかったことに後悔をするようです。
先日53歳で独身の知人が、会社の都合で転勤をするというので悩みを聞くことになりました。現在45分である通勤時間が1時間40分もかかってしまうとのこと。辞めても今更この歳で雇ってくれる所があるのか、続けるにしても、残業で遅くなってしまった時のことを考えて、新しい職場の近くに家を借りようかと悩んでいました。
それに加え75歳のお母様を一人残していくのも気になっていたようです。しかしお母様ご自身はとてもお元気で、一人暮らしには全く問題はなく、むしろ新しい職場に行くように勧めてくださっているのだそうです。そうなるとあとは本人の決断のみです。誰でも未知のことは不安になるものですが、このお話をお聞きして私には、何か親の介護を言い訳にチャレンジしないもっともらしい理由を探しているようにも感じました。
私は知人が後悔しないように、次のことを話しました。 「私の最高のチャレンジは出版をしたことだったんですよ。それはリピーターのお客様から『あなたの接客の仕方を本にしてみませんか』と言われたことから始まったのです。初めは『何言ってんの、このお客さん頭がおかしいんじゃないの』と思ったんですよ。何しろ私は高校を卒業してから一度も文章など書いたことがなくてね、在学中でも最高枚数は原稿用紙4枚半を一回だけ。それでも接客の経験を書いてみようということになって書き始めたんです。原稿用紙に書いては消し、書いては消しの繰り返しが続き、そのうちパソコンでやった方が早そうだと思い、打ち込むのですが、最初は指一本で打ち込んでいたのを主人が見かねて『両手を使った方が早いよ』とアドバイスされたんです。自己流に『あいうえお、かきくけこ、〜ん』と打ち込んで最初は40分もかかっていたの。でも3日目にはね、20分で打てるようになっていたんです。早くできるようになったら気分がよくなって、『そうだ、あのことを書いてみよう』と思うようになって、気付いたら長い時で8時間も書いていられるようになっていたのよ。私ったら文章を書くのが好きだったのかしら?なんて自己陶酔なんかしてしまい、文章のうまい下手は別にして、達成感を味わうようになったらますます書くことが面白くなったんですよ。おかげで異国のバンクーバーで多くの人に出会えることになりました。これこそが想像をはるかに超えた幸せだったんです。だからあなたもチャレンジしてみたらどうですか…?」
ちなみに私のチャレンジのベースになっているのは、「後悔をしない人生を送る」ことです。
ある日、ふっと人生の最後にどんな言葉を残すのだろう?と考えたことがあります。そうして頭に浮かんだのが「良い人生だったな〜♪」と言い遺すこと。ところが何気ないような台詞ではあるものの、これを堂々と言い切って亡くなるためには何十年もかかると気付きました。
そこで迷ったとき、悩んだとき、「後悔しないと決めたじゃない!」と強く自分に問いかけるようにしています。強く問いかけることで勇気が湧いてきます。なぜなら人は幸せになるために生まれてくるからですって!!
著書紹介
2012年光文社より刊行。「帝国ホテルで学んだ無限リピート接客術」一瞬の出会いを永遠に変える魔法の7か条。アマゾンで接客部門2位となる。
お客様の心の声をいち早く聞き取り要望に応えリピーターになりたくさせる術を公開。小さな一手間がお客様の心を動かす。ビジネスだけでなくプライベートシーンでも役立つ本と好評。
福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。