2016年10月6日 第41号

 皆様は日本料理に食卓作法(テーブルマナー)があることをご存知でしたか?

 お恥ずかしい話ですが、私は和食店に勤務していた頃、日本料理にテーブルマナーがあることを知りませんでした。

 お客様同士「器に口をつけてもいいのかしら?」「お椀のフタは飲み終えたら裏返しにしておくものかしら?」など、このような会話を耳にするのですが、私も正解がわからず周囲も首をかしげるばかりでした。そもそも西洋料理のテーブルマナーの存在はよく耳にするのですが、どうして日本料理にはテーブルマナーがないのかしら? と残念にさえ思っていた時期がありました。その後日本料理のテーブルマナーを学んでいくうちに、「日本にはなんて素晴らしいマナーがあるのだろう。私達の先人はなんとすばらしい文化を残してくださったのだろう」と感慨深く感じるようになりました。

 背筋を伸ばしていただく美しい姿勢、優しく、柔らかな手の動きによるお箸の上げ下げ、そして穏やかな立ち居振る舞いなど日本料理の※礼儀作法には、品の良さとなんとも言いようのないあたたかさを感じる時があります。そんな素敵な日本料理と日本料理のテーブルマナーをこれから覗いてみましょう。

※礼儀作法とは、礼儀と作法、この二つの言葉で成り立っています。
礼儀=相手を思う心。
作法=思う心を形として表したもの。

会席料理・献立の順番  

基本コース

フルコース

①前菜

①前菜

②お吸い物

②お吸い物

③お刺身

③お刺身

④煮物

④煮物

⑤焼き物

⑤焼き物

⑥食事(ご飯、味噌汁、香の物)

⑥蒸し物

⑦水菓子(デザート)

⑦揚げ物

 

⑧酢の物

 

⑨食事ハ (ご飯、味噌汁、香の物)

 

⑩水菓子(デザート)

 

★西洋料理にコースメニューがあるように、会席料理にもひと皿ひと皿をよりおいしくいただくために順番があります。どのような順序で出されるのか、また、もしその順番がいつもと変わっていたら、それはなぜでしょうか。  

●もともと会席料理の献立は、一汁三菜(吸い物・刺身・焼き物・煮物)の基本コースが主流でしたが、現在ではそれに前菜・揚げ物・蒸し物・酢の物などの酒肴(さかな)が加えられ、最後に飯・味噌汁・香の物、水菓子が出されフルコースになりました。基本コースとフルコースができた理由を想像しますと、単に予算の関係だけではなく、宴席の時間の長短を考慮してのことではないかと考えます。人と人とが交流を深めるためにいかに食事の場面が重要かを示していることがわかります。

●基本コース、フルコースの順番は左の表の通りですが、時には煮物と焼き物が入れ替わったり、揚げ物と蒸し物の順番が入れ替わることがあります。これは日本には四季があり、その季節の旬の食材を最もおいしい料理法で作るためです。おいしいうえに珍しい食材なので、空腹の早い段階で先に召し上がっていただきたいという、お客様の笑顔を想像する料理人の思いから、順番を入れ替えることもあります。いつでも手に入りやすい食材は後から、ということです。

●しかし、前菜、お吸い物、お刺身は、1番から3番の順序が基本的には入れ替わることはありません。なぜなら前菜の目的は、お客様の食欲をそそるように趣向を凝らし、美しく盛り付けをしているからです。また、その季節のものを少量ずつ出して目でも楽しませ、次の料理の期待を持たせる役目を持っています。ですので一番始めに出てくるのです。

●前菜のあとに出るのがメイン料理です。日本料理のメイン料理は“椀差し”という言葉があるように、お吸い物とお刺身、この二つがメインです。私は「日本料理のメインはなんでしょう」という質問をよくするのですが、多くの方が「お刺身?」って答えます。まさかメインが二つあるとは思いませんよね(笑)

●そして酢の物が最後に出されるのもたくさんの料理をいただいたあと、「口の中をサッパリさせる目的があるから」ですって。私たちの先人は、おいしくいただくための順番までよく考えてくださいましたね。お陰で私も全てをおいしくいただけています。

 以上が会席料理の献立の順番になりますが、これは幕末から昭和の初め頃にかけてこのような形が作られていったようです。長い歴史と伝統が作り上げた先人の知恵とご苦労がきっとたくさんあったのでしょうね。

 また、日本の食材は繊細な味をしていますので、調理法を変えればいかようにでも味を変化させられるという、世界でも稀な食文化を持っています。それを私たちお客様はただおいしい、おいしいといただいておりますが、料理を作る人といただく人の感性が一致してこそ、もてなす人も、もてなされる人も同じ気持ちになれると思います。そのためにもテーブルマナーは必要不可欠になると考えますが、いかがでしょうか。

(文・福本 衣李子)

 

◆私がテーブルマナー講師の認定を取得した機関は、社団法人:日本ホテルレストランサービス技能協会です。(厚生労働省認定。略してHRSという。)ホテルやレストランに従事するサービススタッフがサービスの質の向上を目的とする協会です。

 


福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

 

セミナー紹介
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