2020年3月26日 第13号

 「玄関の郵便受けの上に、茶色い袋を置いてるので、食べてね」。

 夕方、娘と散歩から戻ってきて、コンピューターを開けると、最近仲良くなった友人からこんなメッセージが入っていた。友人は、我が家から車で30分ほどのところに住んでいる。それだけに、もしや宛先を間違えたんじゃないかな?と、半信半疑で外に出てみると、本当に茶色い紙袋が郵便受けの上にちょこんとのっていた。袋の中身を開けてみると、おいしそうなフムスやチョコレートボールがたくさん!なんてうれしいサプライズ! 昨日、フムスを作っていて私のことを思い出してくれた、とのことだった。

 夕食前でお腹が空いていた私たちは、「おいしい!」と、丁寧に包まれたお裾分けを食べながら、お腹も心も幸せでいっぱい。そういえば、日本に住んでいた時は、こんな感じで、毎日のように母が近所の人たちとおかずの交換をしたり、私も学校で友人と手作りお菓子の交換をしたなーと懐かしくなった。

 人が作る料理は、自分のレパートリーにないものが多い。それだけに「なるほど、これを隠し味として使うのか」などと新しい発見がよくある。それに加え、相手からの温かい気持ち、愛情がぎっしり詰まっているだけにいつもよりおいしく感じる。そういえば、友達にお裾分けなんてしたの、いつだっただろう。

 現在、首都オタワでは新型コロナウイルス感染拡大阻止に向けて、自主隔離するよう言われている。それが落ち着いてからでも、久々に会うことになる友達に私も何か作ろうと、今月は新しいレシピをいろいろ試してみることにした。

  


■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。www.makoogura.com

 

 

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