2019年6月27日 第26号
サッカー経験ゼロの私が、とうとう息子のサッカーチームでコーチ・デビューを果たしてしまった。デビューする1週間前には、保護者コーチのためのコーチングクリニックに参加して、サッカーの教え方やボールさばきを2時間ばかり学んできた。コーチの多くは、やはり男性が圧倒的に多く、女性は数人ポツポツといった感じだった。そんな彼女たちも、みな幼稚園児のコーチだったので途中で帰ってしまい、小学4・5年生チームを教える私は、居残り組でパパさんたちに女ひとり混じってテクニックの練習を受けた。それにしても金曜日の夜8時半だというのに、私の足元から本気でボールを奪おうと、真正面から突っ走ってくるパパさんたちは結構恐かった(笑)。みんな、私の2倍はありそうな体型だけに、けがをしないかと、テクニックよりも、その方が心配だった。とりあえず無事クリニックを終え、学べることは学んだので、あとはユーチューブと私の生徒となる息子から、教えてもらうことにした。
「こんなコーチ、ありえない!」と言いながらも、丁寧にサッカーを教えてくれた息子。そのおかげで、サッカーがすっかり楽しくなり、コーチ業にも身が入るようになった。でも、肝心の我がチーム、弱い!試合で負けるたびに、これってコーチのせい? と、余計なことが頭によぎってしまう。そんな時は、こう自分に言い聞かせる。試合に勝つためにサッカーのコーチを引き受けたんじゃなくて、子供たちにサッカーを楽しんでもらうために、コーチを引き受けたんだと。練習に来る楽しみや、練習で何か一つでも学び取ってもらえたら、私は十分、コーチの役割を果たしているんじゃないかと。
そう思い直してみると、生徒たちの練習への出席率は抜群だ! みな初対面だったにもかかわらず、すぐに仲良くなってくれ、毎回、子犬のようにグラウンドで戯れている。「誰も来ないだろうな〜」と思うような土砂降りの日でさえ、みな、ずぶ濡れになってやってくる。「コーチ! 今日は、鬼ごっこしよう!」「かくれんぼうがいい〜!」「よし!じゃ、それは練習終わってから!」我がチームの練習は、毎回こんな会話でスタートする。
そんなカジュアルさが逆に良かったのかチームの結束がだんだん強くなり、サッカーの腕も知らぬ間に上達した。できないコーチが率るチームだけに、みんな、もしかしたら、各自、家で猛練習をし始めたのかもしれない(笑)。シーズンも半ばに入った頃には、ゴールを決めるまでに成長し、しかも一人のプレーヤーがボールを牛耳ることはなく、チームメートほぼ全員がゴールを一度は決めているという快挙だ。たとえ試合に負けたとしても、みんながボールに触れてプレーできたら、とっても素敵だと、親の立場から、そして素人コーチ的立場から、そう思う。
「今日もありがとう!」と、練習後、私を探して、お礼に来てくれる子供たち。そんな一言で、コーチを引き受けてよかった! と思う。そして今シーズンも、もうすぐ幕を閉じる。
■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。フェイスブックで繋がれたら嬉しいです。エッセイ等のご意見もお気軽に
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