2018年2月22日 第8号

 「第二外国語は、思春期に入る前に学んでいないと、ネイティブスピーカーにはなれません。思春期に、大脳は成熟するのですが、その際、脳内の使っていない神経細胞間の接続部(シナプス)は捨てられ、他の用途にそのスペースが使われます」。

 こないだ大学の授業で、教授がそう言った。例えば、日本人はRとLの聞き分けができないけど、この聞き分けも思春期に入る前に英語にしっかりと触れていないと、聞き分ける必要がないと脳が判断し、その箇所の細胞が捨てられるということだ。こんな大切なこと、なんで日本にいるときに誰も教えてくれなかったんだろう!と、驚きは隠せない。

 夫に話すと、「この現実を、カナダに来る前に知っていたら、どれだけここでの生活が楽になってたことだろうね。英語に対するプレッシャーがなくなってたんじゃない?」と、話が弾んだ。

 そしてふと思った。どれだけの若者たちが、留学したら英語がペラペラになると思って、カナダに来ていることだろう。どれだけの人たちが、カナダに数年住んでいるのに、まだ英語が完璧になっていないと悩んでいることだろう。そしてどれだけの人たちが、自分の英語を聞き直されたり、間違っていると指摘されるたびに、落ち込んでいることだろう。

 もし自分の英語に対して自信を失くし、へこんでしまうことがあるのなら、この話を思い出してもらいたい。思春期までを日本語で過ごしたなら、その後いくらがんばっても、完璧にはなれない。だって私たちの脳の構造がそうなっているのだから。

 そして、あなたの英語に対して、馬鹿にするような発言や態度を見せる人がいるのなら、自信を持って相手に伝えてほしい。

 「子供時代は日本語で育ったので、英語は完璧には話せない。生物学的に(そして脳科学的に)不可能なのだ」と。ちょっとは心が楽になったかな?

 


■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。 
ブログ: http://makoogura.blog.fc2.com 

 

 

 

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