2020年2月13日 第7号

新年早々の1月2日、ブリティッシュ・コロンビア州ニューウエストミンスターのアンビル・センターで年末年始に開催されていた、さまざまな分野のアートが披露されている祭典『ウィンター・セレブレーションズ』で、コンテンポラリー・ダンスのパフォーマンスを催したデュオがいた。その内の一人である日系四世のジェン・青木さんに話を聞いた。

 

『ウィンター・セレブレーションズ』でパフォーマンスをしているジェン・青木さん(写真手前)(Photo by Valerie Hider)

 

—ダンスの経歴は?

 3歳からダンスを習い始めタップ、アクロバット、バレエにジャズとさまざまなダンスに挑戦しました。10代になるとジャズダンスとコンテンポラリーダンスのコンテストに出場し、ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスに通い、バレエのグレードテストも受け昇級しました。

 サイモンフレーザー大学のダンス・プログラムで訓練を受けていた時、自分にとってダンスとは曲に合わせて踊ること以上のものであると気づきました。それは、体験的で啓蒙的、繊細で個人的な表現であり、エネルギーの高鳴り、物語、アイディアと無限の可能性を感じるものでした。

 大学卒業後はバンクーバーのEDEMというコンテンポラリーダンス・スタジオの奨学金を得て研究生となりました、そして、さまざまなダンスや身体機能のトレーニングを受けにヨーロッパへ赴き、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、オランダでダンスカンパニーのオーディションを受けました。

 カナダに帰国してからは、ザ・ボディー・オーケストラというダンス・トゥループの共同制作者として活動しています。また、ダンサー/振付家/ダンス・インストラクターとしてさまざまなパフォーマンスを制作したり、踊ったり、バレエの技術を教えています。

—日系四世としてのアイデンティティーをどう感じていますか?

 バンクーバーに住むハーフ・ジャパニーズとしてビジブル・マイノリティーの私は、学校時代にいろいろな面で違和感を感じたこともありました。大分時間が経っていても、カナダ移民の祖父母が経験した第二次世界大戦時の日本人抑留の世代を越えた精神的外傷があることを感じます。なぜなら、日本が戦争に負けたので日系人であることが目立たないようにとの配慮からカナダのメインストリームの文化に溶け込むようにと、祖父母は、父に、そして、孫である私にも日本語を含む日本文化を継承しようとしなかったからです。

 今の私は自分が日本人であることに心から愛情と誇りを持っています。自分の身体には日本人の血が流れていると感じ、そのことを自己表現に取り入れ、カナダで日系人として生きているアイデンティティーを探索し続けています。

—どのような作品に取り組まれていますか?

 人生の悲喜こもごもや、環境問題、テクノロジーが人間に与える影響、2016年のアメリカでの総選挙などさまざまなテーマに取り組んできました。今は、Fall Down Seven Times, Get Up Eight『七転び八起き』のタイトルの日系四世としての自分のアイデンティティーを明暗両面から探っていくダンス作品作りをしています。このソロのダンス・パフォーマンスを2020年の5・6月にダンス・ビクトリアに招かれて制作し、その後、7月に日本を来訪しリサーチを続ける予定です。

—これからの抱負は?

 これからもインスピレーションによる閃きをダンス制作、そして、パフォーマンスに取り入れていきたいです。そして、今、手掛けている『七転び八起き』のソロ・ダンス作品を完成させ、カナダと日本の両方で公演したいです。

 

 自らの日系四世のアイデンティティーを身体表現に作品化していくジェンさん。彼女のパフォーマンスが発表されることが今から楽しみだ。

(取材 北風かんな)

 

ジェンさんが共同制作者をしているザ・ボディー・オーケストラの公演風景(Photo by Andi McLeish)

 

ジェン・青木さん近影(Photo by Michelle Moore)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。