2020年1月16日 第3号
男性だけで構成される米国の『トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団』。創立45周年の歴史を持ち、伝統的な古典バレエをパロディ化して楽しく、娯楽性の高いパフォーマンスを提供することで知られている。このバレエ団に2018年に入団したのが日本人ダンサーの吉野鷹臣さんである。
ダンサー、吉野鷹臣さん(Photo by Zoran Jelenic)
4歳でバレエを始めたそうですね。
3つ上の姉が習っているバレエ教室に連れていかれ、始めることになりました。始めは行くのがすごく嫌だったのを覚えています。
初めてコンクールに出場されたときの感想は?
最初のころは舞台の上で踊れることがうれしくて楽しんでいましたが、学年があがるにつれ楽しさより緊張のほうが強くなり、コンクールが好きではなくなっていきました。
ロシア国立ワガノワ・バレエアカデミーに留学したそうですが、ロシア語は前から勉強していたのですか?
ロシア語の授業がバレエクラスの合い間にありましたが、ロシア語をロシア語で教えられたので理解するのが大変でした。
バレエ学校では、最初の1カ月ほどは学校の食堂の食事が合わなくてほとんどご飯を食べられず、苦労しました。
授業の面ではスタイルのいいロシア人に囲まれてのレッスンで、僕は背が低いのがコンプレックスだったので、ときどき挫折しそうになりました。
ロシア留学のあと、アメリカにもバレエ留学したのですね。
ワガノワ・バレエアカデミーのあとに、アメリカのエリソン・バレエスクールに留学しました。そこでは先生がロシアのメソッドを教えてくださったので、メソッドの違いはありませんでしたが、ロシア語から英語に変わったので、また言葉の面でたくさん苦労しました。
アトランティック・シティー・バレエ団ではどんな役についていましたか?
『眠れぬ森の美女』よりブルーバード、『ロミオとジュリエット』よりマーキューシオ、『くるみ割り人形』よりスノーキングなど、さまざまな役を躍らせていただきました。
トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団に入団したきっかけ、そこで工夫したことはありますか?
バレエ団に入ったきっかけは、友達にオーディションがあることを教えてもらい、もともとポワントで踊ることが好きだったため、それを機に挑戦しました。 (注:ポワントとは爪先で立つこと)
昨年の日本公演では全国11会場で踊りましたね。ちょうど台風が来たころでしょうか?
大阪公演のときに台風の影響で来場できないお客様がたくさんいらっしゃいましたが、公演のほうはキャンセルにならず上演することができました。自分の母国で踊れてすごく楽しかったし、緊張もしました。でも、家族やたくさんの友人に、プロとして踊っている姿を初めて生で観てもらえたのがすごくうれしかったです。
バンクーバー公演での『白鳥の湖』『瀕死の白鳥』ではどんな役ですか? オペラ『ファウスト』の音楽とボリショイバレエからヒントを得た『ワルプルギスの夜』という作品も上演されると聞いています。
まだキャストはわからないのですが、以前『白鳥の湖』でオデットを何度か踊らせていただいたので、今回の公演でも踊らせていただけるようがんばりたいと思います。
『ワルプルギスの夜』ではメインの役を踊らせていただくので、テクニックだったり魅せ方を研究中です。
2月のバンクーバー公演をはじめ、アメリカでのツアー公演がすごく楽しみです。
吉野鷹臣 Takaomi Yoshino
1996年生まれ。2005年 ISA BALLET SCHOOLでクラシックバレエを始める。
2013年 Osaka Prix男性1部2位、こうべ全国洋舞コンクール 男性ジュニア1部5位、バレエコンクール大阪 young man4位。2014年 Osaka Prix男性1部2位 (ロシア国立ワガノワ・バレエアカデミー スカラシップ受賞)、こうべ全国洋舞コンクール男性ジュニア1部3位、バレエコンクール大阪 young man3位。 2014年9月からロシアのワガノワ・バレエアカデミーへ入学。米国アトランティック・シティー・バレエ団を経て、2018年8月にトロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団に入団。
トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団 バンクーバー公演
2月1日(土)8PM、クイーンエリザベス・シアター
チケット:$25〜$126.75+税。
購入サイト:ticketstonight.ca
(取材 ルイーズ阿久沢)
ダンサー、吉野鷹臣さん(Photo by Zoran Jelenic)
古典バレエをパロディ化して楽しくパフォーマンス。『トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団』(Photo by Zoran Jelenic)