2018年5月17日 第20号

「日本文化を海外に持ち出して、世界の人々に楽しんでいただきたい」という案が、知人の生間流師範から持ち上がりました。和食がユネスコの無形文化遺産に登録を申請した理由と同様に、以下の3つの文化についても日本人の関心が薄れていることを危惧しているからです。それは、烏帽子(えぼし)、袴(はかま)、狩衣姿(かりぎぬすがた)で、まな板の上の魚に直接手を触れず、包丁裁きを披露する“包丁式”と、京都の“芸妓、舞妓の踊り”そして日本料理のテーブルマナーです。

そこで「まずは、福本さんが踊りや舞妓さんのことを学んで説明できるようにしてください」と言われ、貴重な体験をしてきました。

 

 「踊りをはしごしてわかったこと」

 ということで今月号と来月号のテーマは、2回に分けて“京都の踊り”と“仕込みさん”のご紹介をします。とは言っても実は、踊りのことも舞妓さんのことも私は全くわかりません。そこで初心者の女性からの視点でお伝えしたいと思います。

 私は、ナビゲーターである知人から「今日は、『京おどり』と『都をどり』の2つを観ます。途中で舞妓さんが一人加わります」と簡単な説明を受けて旅は始まりました。

 言われた通り、まずは“京おどり”を鑑賞。会場につくと入口には大勢の人がいました。予約が取れない日もあるというくらいの大人気ぶりです。中に入ると先に踊りの会場ではなく、お点前をしている部屋に案内されました。中にはすでに2、30人の方が座ってお抹茶を戴いています。待っている間に、お点前をしている舞妓さんの襟元から紅い襦袢の衿が5センチくらい見えているのが気になりました。「あら〜あの舞妓さん、襟元がなんか変ねぇ〜? どうしたのかしら?」不思議そうに言うと「あれは、ああいう着方をわざとしているのですよ。昔の高貴な人は下着も高価なものを着ていたので、わざと見えるように着るそうですよ」。なるほど、一つ勉強になりました。

 私はゆっくりと主菓子(おもがし)をいただき愉しんでいました。すると知人はお抹茶だけいただき主菓子には手を付けず、お皿ごと敷いてあった半紙サイズの紙に包んで鞄にしまっていました。お皿を持ち帰ってよいものか、驚いて質問をすると、お皿はお土産になっていることを教えてくれました。もう一つ勉強になりました。

 お茶を楽しむ会ではないので、さっさといただき踊りの会場に移動しました。知人がパンフレットを買ったので、急いで私も買いました。 

  幕が開き、白塗りをした芸妓さんの美しい顔立ちと着物全体に鶴の羽を描いた柄と色彩にまず感動しました。そして指先までしなやかな踊りがこれまた何とも言えず、一瞬で見入ってしまいました。ステージ上は男性役も脇で演奏する地方(じかた)もすべてが女性で宝塚が思い浮かびました。これは歌舞伎の男性だけの世界とは全く真逆なのだとも理解しました。

 踊りは全8景。舞台の背景画の色彩がパステル調でなんとも淡く、品よく柔らかさが伝わります。また悪役は黒の着物で引き抜き袖になっているのか、袖の長さが一瞬で、通常の腕の倍の長さに早変わりました。袖の柄は黒字に紅い炎を描いていて、怖さを演出していました。美しいものでも怖いものでも、着物で演出すると見応えがあるものだと新鮮に感じ、またまた勉強になりました。指定席が前の方だったこととパンフレットと演題が一致していたので、初心者の私も十分楽しむことができました。

 余韻を楽しんでいる暇はないらしく舞妓さんがタクシーで私たちを迎えに来ていました。『こっちどす〜』と手招き、そして次の会場で『都をどり』を鑑賞。

 全体を見回すと、さっきより会場の広さも演者さんたちの人数も倍になっていました。聞くと「東京の新橋芸者を意識しているから」と教えてくれました。指定席は全体が見渡せるようにとの配慮からなのか、中央より後ろの席でした。そのせいか見応えに今一つ欠けていました。ここでもパンフレットを買ったものの踊りとあまり一致していなかったのが残念でした。それでも背景画は「京都の四季」を描き、画そのものには感動しました。

 鑑賞し終えて、またまた無知な私は「“京おどり”というのは京都で主催するので“京おどり”というのだと思っていました。では“都をどり”はなんなのですか」と質問し、その違いを教えていただきました。

 「京都には、祇園甲部(ぎおんこうぶ)、宮川町(みやがわちょう)、先斗町(ぽんとちょう)、上七軒(かみしちげん)、祇園東(ぎおんひがし)、5つの花街があります。祇園甲部芸舞妓の踊りで春に開催するのが「都をどり」、そして宮川町芸舞妓の踊りでこの時期に踊る踊りのことを“京おどり”というのですよ。10月には上七軒の“北の踊り”がありますから、今度これもみてくださいよ」。なるほど。これで春か秋か、どこの花街が主催しているか、で名前が付けられていることがよくわかりました。
例:春+宮川町=京おどり 春+祇園甲部=都をどり  秋+上七軒=北の踊り

次号に続く

 

やや大きめが“都をどり”のお皿

 

 


 

著書紹介
2012年光文社より刊行。「帝国ホテルで学んだ無限リピート接客術」一瞬の出会いを永遠に変える魔法の7か条。アマゾンで接客部門2位となる。
お客様の心の声をいち早く聞き取り要望に応えリピーターになりたくさせる術を公開。小さな一手間がお客様の心を動かす。ビジネスだけでなくプライベートシーンでも役立つ本と好評。

福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。

 

 

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