2018年12月20日 第51号
事例1
ある日、私の記事を読んだことがある、というAさんからこんな質問をされました。「正直者はバカをみるって言いますけど、あれって本当でしょうか…」。背景を尋ねてみると、「自分は一生懸命働いているのに、後輩が随分前からまじめに働いていない」というのです。その仕事は数人が同じ作業をするので、一人がさぼれば、誰かが余計に補わなければなりません。自分の負担が大きくなっていることに不満をもっていたようです。
私は「そんなことはありませんよ。世の中にはずる賢い人や、サボっても平気な人もたくさんいるでしょう。バカをみると言っている人は、出来事をその時々でしかみていないからそんなことを言うのです。一生の単位でみると亡くなるまでには必ず帳尻が合う、合わされるようにできている、と思っています。サボって得をしたように勘違いをしている人は、このことをまだ知らないのだと思います。だからあなたは、後輩はどうであれ、自分に正直にまじめに働けばいいのではないですか」
事例2
先日、仕事先のOさんからこんな相談されました。「この前Hさんが10分もあれば終わる個室の掃除に40分もかかっていました。あれはきっと部屋の中で携帯かなにかを見ていたのだと思います。そのせいでモップ掛けやその他残りの仕事を全部私一人でやったんです。注意をしてほしいです…」。
もし私が、AさんやOさんの立場だったらどうしたでしょう?
私は、もともと誰かに言われたからといってすぐに注意をするのではなく、事実を確認してからでないと言わないようにしていました。果たしてそれが本当に良かったのか、これらの相談を受けて疑問を持つようになりました。
どうすれば解決ができるのか悩んでいたら、いとも簡単に解決策をみつけたのです。それは現在NHKで放映中の朝の連続ドラマ「まんぷく」のいちシーンに答えがありました。食事の時、若い衆の一人が隣の人のおかずを少し横取りをします。当然けんかになりました。すると横取りした方が「いつか言ってやろうと思っていたけど、おまえは普段からまじめに働いていないから、気に食わなかったんよ。これくらいされても当然じゃ!」と言うのです。すると横取りされた方は「なにをゆっとる。オレはまじめに働いているじゃないか」と反論します。
私は、この台詞を聞いて事例との共通点に気が付きました。それは、本人が注意できないで腹にため込んでいた、ということです。
ドラマの中の 随分前から〜、この前〜、いつか言ってやろうと〜、など、 自分が嫌われたくない、人間関係を円満にしておきたいと思えばこそ、なかなか言えないものですよね。それは私も同じです。
つい最近、ある方に仕事の愚痴をこぼしたら、「福本さん、それはね。みかけたときにすぐに言わないとダメなんだよ。言うタイミングが遅いんですよ」と教えられました。この一言が妙に頭に残っていました。
“見かけたらすぐに言う。加えて明るい声で相手がYESと言ってくれるような言葉選びをする”
今までうまく改善できなかった本当の理由は、私自身が自分を甘やかしていた。勝手に言いたくない理由を作っていただけに過ぎなかった、と反省しました。私は、実行する覚悟を決めました。
この案が本当にいいかはわかりませんが、まずはやってみることにしました。すると、驚くことにいつも何かしら言い返してくる人が、素直に聞き入れてくれたではありませんか!
私はAさんが相談してくれたお陰で、“問題点はすぐに声を出して知らしめる”という大事なことに気付かせてもらいました。
正直者(まじめに働いている人)は決してバカをみない! みてはいけない、そんな社会であってほしいと思います。
著書紹介
2012年光文社より刊行。「帝国ホテルで学んだ無限リピート接客術」一瞬の出会いを永遠に変える魔法の7か条。アマゾンで接客部門2位となる。
お客様の心の声をいち早く聞き取り要望に応えリピーターになりたくさせる術を公開。小さな一手間がお客様の心を動かす。ビジネスだけでなくプライベートシーンでも役立つ本と好評。
福本衣李子 (ふくもと・えりこ)プロフィール
青森県八戸市出身。接客コンサルタント。1978年帝国ホテルに入社。客室、レストラン、ルームサービスを経験。1983年結婚退職。1998年帝国ホテル子会社インペリアルエンタープライズ入社。関連会社の和食店女将となる。2005年スタッフ教育の会社『オフィスRan』を起業。2008年より(社)日本ホテル・レストラン技能協会にて日本料理、西洋料理、中国料理、テーブルマナー講師認定。FBO協会にて利き酒師認定。