2019年5月2日 第18号
私たちの多くは、人生のどこかで、何かの形で、介護に関わることが予想されます。ほとんどの場合、 そうなることを事前に予測していたわけではなく、敢えて望んだわけでも、特別な訓練を受けて始めたわけでもありません。目覚ましい医療技術の進歩により、寿命が延び、慢性的な疾患を抱えていても、長生きできるようになったことが、介護に関わる人が増えた理由のひとつと考えられます。近年、これが、「新しい普通」になってきています。
カナダ統計局によると、BC州の場合、人口の28%を「家族介護者」 が占めています。その大半が女性で、そのうちの60%が仕事をしながら介護をしています。 89%の「家族介護者」は、少なくとも1年以上、介護に携わっており、平均して6年間、介護をしているという数字が出ています。これほどの数の家族が介護に関わっているにも関わらず、「家族介護者」による介護は、多くの場合、それほど認められていないのが現状です。義務的な役割というよりも、家族や友人としての人間関係という繋がりに基づく介護であるため、「家族介護者」の多くが、自分が介護者であるという認識がないこともままあります。
さて、「家族介護者」とは、「自宅または介護施設等で生活する、精神的または身体的な健康上の問題や、慢性疾患がある、あるいは、加齢により体が弱っている成人を、無償で世話をする人」と定義されます。例えば、出かける際の送り迎え、用事の代行、医師の予約への付き添いおよび代弁者としての役割、予約のスケジュール管理、医療的治療の補助、身の回りの世話、精神的な支えなど。いわば、日常生活全般に関わることすべてが「家族介護者」が行う仕事と考えられます。
同じく、統計によると、92%の「家族介護者」は、介護にやり甲斐を感じており、70%の人が、被介護者との関係が、介護を始める前より良くなったと報告しています。しかし、これは、「家族介護者」が日々の介護からくるストレスや健康上の問題を感じていないということではありません。実際、「家族介護者」が、慢性疾患やうつ病を患うことや、周りの支援なしに介護をしている場合、「孤立化」を経験するリスクが高まります。
「家族介護者」の中でも、介護を始めた初期段階から、何らかの支援を受けている人ほど、より長く介護を続けることができると言われています。例えば、家族を介護している人が周りにいたら、介護や介護に関する支援の情報を提供することが、間接的な支援になります。些細なことのようですが、「家族介護者」の話を聞くだけでも、十分な支援になります。しかし、被介護者の状況により、直接的な支援は避けるべきケースもあります。例えば、複合的な慢性疾患や、進行性あるいは生命に関わる疾患がある場合、加齢により体が弱っている場合、病院を退院したばかりという場合は、実際に行う直接的な支援は、被介護者のことを最も理解している「家族介護者」に任せておくのが無難でしょう。
しかし、「家族介護者」は、日々の介護に追われ、自分のための時間が持てないだけでなく、自分のことを考える暇さえありません。介護をしていることを自分から話さない人や、敢えて避ける人もいます。困っていても、なかなか助けを求めることができない場合や、助けを求めることに後ろめたさを感じている場合もあります。しかし、そのままでは、介護の責任が更に重くのしかかり、特にひとりで頑張っている人の「孤立化」は進む一方です。
「最近、元気にしてる?」、「困ったことはない?」、「何か手伝えること、ある?」というような声かけ。 役立ちそうな介護や介護サービスの情報を調べて伝える。支援といっても、難しく考える必要はありません。
介護は、先の見えない闘い。あなたの周りに、一人で頑張っている人はいませんか?
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定