2019年5月16日 第20号
まだまだ手がかかる子供の育児をしながら、高齢の親の介護もしなければならない。そんな状況にある年齢層が「サンドイッチ世代」と呼ばれる世代です。サンドイッチの具のように、子供と親の間に挟まれ、精神的にも経済的にも、その状況は決しては楽なものではありません。この言葉は、最初に米国で使われ始めたもので、多くの場合、三世帯同居をしています。
この「サンドイッチ世代」という呼び方から派生して、「クラブサンドイッチ世代」や、「オープンサンドイッチ世代」という言葉も生まれています。前者は、父母、夫婦、子ども、孫の世代、または、祖父母、父母、夫婦、子どもの世代が同居している場合、後者は、夫婦または独身の子供が親世代と同居している場合にあたります。いずれも、同居の理由が、介護に関わる場合が多いのが特徴です。
初婚年齢が遅くなる「晩婚化」やそれに伴う「晩産化」、「生涯未婚者」の増加などが、多くの先進国で話題になって久しくなります。結婚していても、意識的に子供をもたないディンクス(DINKS /Dual Income No Kids)夫婦も増加傾向にあり、子供のいる夫婦でも、子供の数は、平均して2人以下の「少子化」も進んでいます。このようなライフスタイルの変化が、育児と介護の板挟みになる「サンドイッチ世代」を生んでいます。「サンドイッチ世代」の平均年齢は、男女共、40歳前後で、育児のみを行っている人より、4、5歳は年齢が高く、介護のみを行っている人より20歳ほど年齢が低くなっています。男性は、ほとんどの場合、仕事を持っていますが、女性は無職の場合が多いため、育児と介護の負担は女性にかかり、配偶者や周囲からの手助けもない場合も多いのが現状です。
さて、 既にその多くが、定年退職をした、あるいは定年退職の時期を迎えている「団塊の世代」。この世代にあたる人達は、 20代半ばまでには結婚し、その後すぐに子供が生まれ、50代にさしかかる頃に、生まれた子供が成人していれば、自分の親の介護が必要になっても、子供の育児と介護の板挟みになることはありませんでした。介護する親の平均寿命を考えても、現在、サンドイッチ状態になっている世代に比べ、介護年数は、今ほど長くはなかったと考えられます。
しかし、その次の世代の「団塊ジュニア」と呼ばれる30代から40代の場合、事情は変わってきます。この世代は定年退職後のことを考え始める年齢になっても、まだ大学に通う子供がいる場合もあり、その上、親は80歳を超え、介護が必要な年齢になっています。つまり、「団塊ジュニア世代」こそが、近年のライフスタイルの変化の影響を大きく受ける、「サンドイッチ世代」にあたります。
この「サンドイッチ世代」には、一度家を出た後、何らかの理由で、やむなく親元に戻ってくることになった 「ブーメラン世代」も含まれます。「ブーメラン現象」が社会的現象として注目され始めた当初は、20代の若者が主でした。しかし、現在はその年齢層が高くなり、子供(実家の親にとっては孫)と一緒に戻ってくるケースが増えてきています。失業やその後の就職難、離婚や別居をした後、住宅価格の高騰や賃貸物件の空室率が低いことなどから、思うように新しい住まいが見つからない場合だけでなく、実家に戻るほうが、新しい家を探すより簡単など、 実家に戻る理由は様々です。しかし何れの場合も、経済的事情が大きく影響しています。
育児と介護を両立し、その他の家事全般もこなす「サンドイッチ世代」。最も多いのが30代、40代で、 周りに介護を経験している人が少なく、同世代の相談相手はなかなか見つかりません。介護者のサポートグループも、その主な対象は、配偶者およびパートナーや親を介護している上の世代の人たちです。「サンドイッチ世代」の孤立を防ぐためにも、社会全体のサポートが必要です。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定