2019年4月18日 第16号
教育改革
この冬、公私の用事で6週間ほど訪日した。行くたびに良くも悪くも日本がどんどん変わっていることを実感する。特に今回著しい変化を感じたのは、オリンピックに向けての突貫工事が各所で行われていることだった。もちろん活気があるといえばいえるが、人々の思いがこの変化にどれほど沿っているのか…ふと疑問を感じることも多かった。
一般の日本人が「おもてなし」精神で外国人観光客を迎えようとしているのは素敵なこと。とはいえ、それでは世界共通語である英語がどれほど理解できるかとなると、未だにはなはだ心もとない。
もちろん一般論としての話で例外も多いことは承知である。だが日本は義務教育が行き届き、その多くが高等教育を受けているにも関わらず、平成が終わろうとしている今でさえ「英語での日常会話は一応大丈夫」と言える日本人はまだ本当に少ない。
それは政府も承知で、20年に予定の国を挙げての「教育改革」施行では、小学生に対する「英語の導入」を打ち出した。すでに現在でも5、6年生に対し簡単な「外国語活動(通信簿に記載なし)」をしているのだが、これを3、4年生に引き下げて5、6年生からは英語の授業を70時間にして「正式教科(通信簿に記載)」に加味するそうだ。 引っ張りだこのALT(外国語指導助手)
となると一体誰が授業を受け持つのかという問題が浮上する。すでに14年から小学校の先生のために、各地域で英語教育の研修が実施されている。だがにわか研修を受けても、自分の専門外のため実際には「英語を話せない」教師が多いのが現状。中には苦肉の策として、ネイティブの発音ができる人型ロボットと共に教壇に立つ例もあるとか。
国は来年までに英語の専科教員を配属する予定を立てているが、こうした状況の中でますます需要が高まるのがALTとして日本に来る英語教師である。文部科学省によると17年度末で全国の小学校には1万3千人が雇用されているという。
だが刻々と迫る改革を目前にその数は十分でなく、彼らをいかに確保するかは各自治体の重要課題になっている。ここでも苦肉の策として「英検2級」程度の英語力を持つ「日本人のALT」で穴埋めしている学校もあると聞く。
今どきの国際結婚
日本はコンビニと並んでどこに行っても必ずあるのが駅前に並ぶ大手チェーンの英語学校。加えて近年増大の一途をたどるのが、普通の家の前に掲げる「**英会話教室」の看板である。ビジネスをしているのは英語圏からの外国人で、その数の多さには訪日のたびに驚かされる。一応ALTとして雇われている外国人の教師は、大学を卒業していることが条件だが、個人で英会話教室を持っている場合は必ずしもそうとは限らない。
そうしたビジネスをする場合、これは今に始まったことではないのだが、一番人気が高い教師は「白人・金髪・青目の男性」である。どんなに小さな教室でもそんな容姿を持っていれば100〜150人ほどの生徒を集めるのは朝飯前という。加えてそうした教師はどんなステータスで入国しようが、2、3年もすれば日本女性と結婚して永住権を取る例が多いそうだ。
知人の白人女性T嬢は「今でも日本に来る外国人男性は、『日本女性は従順で御しやすい』と思っている人が多く憧れの対象なのよ」と苦笑する。「それに日本女性も外国人男性と町中を歩くと人の眼を集めるし優越感を満足させてくれるの」と。「でも」と彼女は続ける。「一旦結婚すると夫婦で行動を共にして、夫の友人の集りに出ることはほとんどないのがとても不思議」とも。
子種の提供者
私が真剣に耳を傾けるせいか、彼女はさらに続けて「今頃の日本女性は結婚して子供を産まないでしょ。キャリアを身につけ出産ギリギリの歳まで一人でいる人も多いため、日本人男性と結婚するより外国人との方がミックスの孫が生まれるので親も大歓迎。まして相手が白人となればもうそれは大喜びで、家や車を買って娘夫婦に与えるの。そうなれば夫は子種の提供者だから下にも置かない扱いを受けるわけ。仕事なんかしなくても“ハウスハズバンド”となって大手を振って家でベビーの面倒をみて、妻は引き続き働くってわけよ。Isn't it wonderful?!」と彼女は破顔一笑する。
どこまでが真実で、どこまでがただの都市伝説か定かではないが、それではなぜ日本人夫と外国人妻の組み合わせは昔も今も極小数なのか。「だって外国育ちの女性は物怖じせずに言いたいことをハッキリ言うからね。日本ではそういう女性は嫌われるのよ」と彼女は肩をすくめた。
「なるほど…」私はただうなってしまった。
サンダース宮松敬子氏 プロフィール
フリーランス・ジャーナリスト。カナダ在住40余年。3年前に「芸術文化の中心」である大都会トロントから「文化は自然」のビクトリアに移住。相違に驚いたもののやはり「住めば都」。海からのオゾンを吸いながら、変わらずに物書き業にいそしんでいる。*「V島 見たり聴いたり」は月1回の連載です。(編集部)