2019年2月21日 第8号

同性婚の社会的認知

 カナダではもうすっかり社会に根付いている同性婚は、2005年に世界で第3番目に承認された。今や異性婚と何ら変わらずに社会的認知を得ている。とは言え、宗教的あるいは個人的に、どうしても受け入れられないとする人たちがいる事も事実である。だが一般的に言って、人々は14年前のように公に異議を唱えることはなくなった。

 今や同性婚は世界の25カ国が認めており、G7の中で国レベルの法的保護制度が敷かれていないのは日本だけである。

 この法律が多くの国で確立するまでには、お互いに信頼して家族同様の生活をしていても、同性愛者の場合法律的には何時までも独り者として扱われていた。加えて「精神病」として処理していた国もあり、カナダでも半世紀前の67年までは、同性愛者と分かれば監獄送りになっていた過去がある。

バレンタインデーに集団訴訟

 日本ではちょうど一週間前のバレンタインデーに、全国の同性カップル13組が国を相手取り、賠償保障を求める集団提訴を各地裁(東京、大阪、名古屋、札幌)で行ない、記者会見をした。生活そのものは既婚者と変わらないにもかかわらず、公的にはシングルである日本の法律は、違憲であり不平等だと主張。

 つまり憲法24条は「婚姻は両性の合意に基づいて成立」と規定しているが、それは「同性婚を禁止する趣旨ではない」と解釈。国が民法改正などの立法措置を怠った結果のためで、結果的に精神的苦痛を受けたとして、一人当たり100万円の賠償保障を国に求めたのである。弁護団によると同性婚の合憲性を問う訴訟は全国で初めてという。

 だが最近は東京都渋谷区などのように、一部自治体が同性パートナーの証明を発行する取り組みを開始している所もあるが、まだ同性婚の法制化にはなっていない。その為病院での面会、税制、遺産相続など様々な面で、法律上の配偶者としては扱われないのが現状だ。

 またこれは国際結婚の場合にも影響され、男女の夫婦なら結婚によって配偶者ビザを取得できるが、パートナーとしての立場では不可能である。

 何事によらず人として当然の権利を得るための公民権運動は、社会的認知を得るまでには長い年月と忍耐が要求される。日本の世論では同性婚を認める人の割合が半数を超えたという調査もあり、明るい兆しも見える。

 今後この行動がどのような方向へ向かうか定かでないが、非常に大きなうねりの一つであることに間違いはない。

尾辻かな子氏立憲民主党衆議院議員

 目まぐるしく変わる日本の政党の中でも、特に耳新しい「立憲民主党」は枝野幸男氏を代表とする中道左派の政党で2017年10月に結党された。原発ゼロ、選択的夫婦別姓、LGBT差別の解消、国政選挙でのクオーター制(定員の一定数を女性に割り当てる制度)などを導入することを大きな柱としている。

 議員には、蓮舫、辻元清美、菅直人各氏などが名を連ねる中、初めてオープンリー・ゲイであることを公表した尾辻かな子氏(44)(http://www.otsuji.club/)が、新党の成立と共に当選を果たした。

 民進党、希望の党、日本維新の会などの絡みの紆余曲折の末であるが、現在東京の永田町にある衆議院第二議員会館にオフィスを構えている。

 振り返れば尾辻氏に初めてお会いしたのは、私が「カナダのセクシュアルマイノリティたち、人権を求めつづけて」を出版した2005年のこと。カナダの現状を聞きたいと仲間を集めての会合に私が出席したのが14年前のこと。当時から同性愛者の権利ばかりではなく、少数者に寄りそう運動のために奔走していた。私は現在訪日中のため、久しぶりにお会いしたが、国際感覚ゼロの麻生副首相やおじさん議員たちの多い中で元気に活躍されている。

 今年の日本は春に統一地方選挙、7月に参議院選挙を控えている。20代などの投票率は20〜30%と低い。多様性を求めるには、柔軟な若い議員の登場を期待したいが、女性や、20〜30代の若者が議員に占める割合は1割前後にとどまる。

 尾辻議員のさらなる飛躍を望む人は多い。

(東京にて取材)

 

 


サンダース宮松敬子氏 プロフィール
フリーランス・ジャーナリスト。カナダ在住40余年。3年前に「芸術文化の中心」である大都会トロントから「文化は自然」のビクトリアに移住。相違に驚いたもののやはり「住めば都」。海からのオゾンを吸いながら、変わらずに物書き業にいそしんでいる。*「V島 見たり聴いたり」は月1回の連載です。(編集部)

 

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