2019年8月15日 第33号

大量のポリ袋

 今日もスーパーでの買い物から帰ると、セールだったホウレン草二束、スキャリオン一束、採れたてのトウモロコシ数本、ポークとビーフのひき肉、量り売りの干しブドウとピーナツがそれぞれのポリ袋に入ってショッピングバックから顔を覗かせている。冷蔵庫や然るべき容器に入れて納めて見ると、キッチンのカウンターには使用済のポリ袋の山が出来る。

 いつもの事ながらこの光景は私の気持ちを萎えさせる。こんなに袋を使うことに対する自責の念にかられるからだ。だからと言って、野菜類を全部まとめて、或いは、肉や魚を一枚の袋に入れでもすれば、レジの人に怒られるのは火を見るより明らか。となれば個々にポリ袋に入れるほかはない。

 聞けば多くの人がやっているようだが、私も後日この袋はまとめて少量の石鹸水に浸け裏表を洗い、一枚一枚干して乾かし再利用することを心掛けている。だが数日もすればその量たるや大変なもので、ランドリールームはポリ袋オンパレードと化し、洗ってきれいになった袋は引き出しに入りきらない。

 今や買い物袋は各自が持参する「bring your own bag(BYOB)」運動が功を成していることは見て取れるが、その他の個々の食料品を入れるポリ袋はまだ「自分で持って来る」という意識は人々の間に芽生えていない。いつかそうなる日もあるのだろうか…あってくれればいいが…、或いは代替えの袋が開発されるのだろうか…と思うのだが、今の時点では私一人がそう思っても、ごまめの独り言でしかない事は知っている。

ビクトリア大学の学生

「2021年までに使い捨てプラを禁止する」旨の方針を発表し、「製造業者にリサイクルの責任を負わせる新規制を検討している」とジャスティン・トルドー首相が記者会見で発表したのは二ヶ月余り前の6月11日のこと。今後数年の間にEUなどの事例を研究したり、また科学者や産業界と協力して禁止対象のプラ製品の代替を作りたい旨を明かした。10月に控えている総選挙を前にしてのリップサービスに終わらないことを願いたい。

 カナダでもゴミ問題は政治家たちの間で語られて久しいものの、問題が大きく飛躍したのは2017年8月にビクトリア大学(Uvic)のT. Buck Suzuki enviro groupに所属する Meaghan Partridgeという学生がまとめた「プラゴミ問題に対処する為のフレームワーク」と題する44頁に渡るリポートが発端であった。特に海底のプラゴミ問題に特化した報告書は、地元の政治家たちによってオタワの環境大臣にまで届き、またカナダの著名な作家Margaret Atwoodが全国紙のGlobe& Mailと組んで、「プラゴミ問題への取り組み」という問題提起を行うまでに発展したのである。

 Uvicはとても地味な大学で、問題提起によって世論を動かすなどは稀なことであるが、ことゴミ問題に関してはその発端を作り、オタワまで届くことになったのである。と言うことは、それが如何に重大でかつなおざりには出来ないかが証明されたわけである。多くの人が知ることだが、今や海底に溜まっているプラゴミが海洋生態系に及ぼす影響は計り知れないのである。

外国に送るゴミ

 ここの所少し下火になったかに見えるトピックに、フィリピンやマレーシアなどに送られていたコンテナに入った先進国(日本、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなど7カ国)からのゴミの返却問題がある。この春にマレーシアの環境相は「我々の国は世界のゴミ捨て場ではない」、フィリピンのドゥテルテ大統領は「送って来たゴミを引き取らなければ宣戦布告する」とまで言わしめた。本来ならリサイクル可能なプラゴミだけだったのが、汚れた大人のおむつ、キッチンのゴミ、新聞、ビニール袋などが入っていたというのだから怒るのは当然である。民間業者の仕業と政府は言うが、はて?

 中国でも毎日排出されるゴミの量に処理場の能力が追い付かないようだ。人々の生活が豊かになって来たためその量は莫大なもので、習近平氏のごり押し強権でも押し込められないという。

 さて来年はオリンピックを控え、沢山の観光客が訪日するのを期待する日本。取り沙汰されるホテル不足の問題もさることながら、「旅の恥はかき捨て」とする観光客も少なくないであろうことも予測される。彼等が落とすゴミへの対処は十分なのだろうか。

 


サンダース宮松敬子氏 プロフィール
フリーランス・ジャーナリスト。カナダ在住40余年。3年前に「芸術文化の中心」である大都会トロントから「文化は自然」のビクトリアに移住。相違に驚いたもののやはり「住めば都」。海からのオゾンを吸いながら、変わらずに物書き業にいそしんでいる。*「V島 見たり聴いたり」は月1回の連載です。(編集部)

 

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