2017年7月20日 第29号
よく英語の映画の中の子供が言う“I hate you!”(「アイ・ヘイチュー!」)という言葉を耳にするかもしれない。これは日本語に訳すと「(あなた)大っ嫌い!」と言っているようなものだが、実質“hate”という言葉は「憎む」を意味するため、「大嫌い」よりも強い口調だと思って間違いではない。
“hate crime”(ヘイト・クライム)というような言葉が存在するように、差別のために行われるような暴行や、またはかつて南アメリカで認められていた“aparthate”(アパルトヘイト)の中で使われるそんな言葉であるため、親の中では子供が発する冒頭のような表現を阻止する親を見ることもある。“Hate is a strong word” 「“ヘイト”なんかきつい言葉だね」みたいな声をよく耳にする。
ただ現実には“I hate…”という表現は毎日のように使われており、自分の好みに反するものに対してよく使われるのも事実で、そこまで繊細になる必要はない。言葉の意義を知っておくのは大事なのは確かである。
ただ人に対して使うと、もっと敏感になる人たちもいるので、注意したい。
I hate playing golf in rain. 「雨の中のゴルフは嫌いだ(好きじゃない)」
上記のように「好きではない」という意思を強調したいために“hate”を用いている。
逆にこれを否定文として使うと「嫌いではない…」という表現になる。
I don’t hate sushi, but I just can’t eat raw fish. 「お寿司は嫌いではないのだけれど生の刺身が食べれないだけ」
ちなみに「嫌い」という言葉は実は“dislike”という言葉がちゃんと存在する。
I dislike the taste of alcohol. 「アルコールの味を嫌う」
要するに“I don’t like…”「好きではない」と言っているのと同じである。
また“dislike”を否定文で用いる場合は I don’t dislike being around people. I’m just not good at talking in a group. 「大勢の人といるのが嫌いなわけじゃないくて、グループの中で話すのが苦手なだけ」
こう考えれば、“dislike”も“hate”も使われ方は似ているように感じる。
その他、気に入らない様子を表現したい場合は、“hate”や“dislike”を使わずに以下のような言葉を用いるなら表現力の幅が広がる。
I don’t appreciate it.「気に食わないな」
I don’t appreciate the way you talk to me. 「あなたの私に対する話し方が気に入らない」
I was not impressed with the play. 「劇に感心することはなかった(いい出来ではなかった)」
She was not amused by the roudy young kids. 「彼女は騒がしい若者たちに感心しなかった」
人によっては好き嫌いが激しく、何に対してもエゴの強い意見を表現するような人のことを“opinionated person”(オピニオネーテド・パーソン)と呼ぶ。
または自分の好きな選択肢が極端に限られているような人、えり好みするような人は、“fussy”(ファスィー)、“choosy”(チューズィー)、 “picky”(ピッキー)と呼ぶ。これはいくらかスラングが入っているが、先生や目上の人に十分使える表現なので、心配の必要はない。ただ「ピッキー」と呼ばれる人は「好き嫌いがある人」と呼んでいることと同じなので、他人に対して使うときは、その人のことをよく知っている必要がある
(文・イラスト 亀谷長政)