米国の大学で学んでいたときの将来の夢は外交官。ふとした興味から副専攻として受けてみたガラス作りのクラスでその魅力にひきつけられてしまい、以来ガラスアーティストとして活躍してきた新海さん。20年近いそのキャリアの中で様々な人生の転機を経験してきたが、それらはすべて「起こるべきして起こった」と感じることが多いという。
ガラス作りに魅せられて
米国ジョージア州の大学院で社会経営学のMBAを取得した後、まったく畑違いのガラスアーティストの道へ進んだ新海さん。著名なアーティストであるDale Chihuly氏が1970年代に開いたPilchuck Glass Schoolで学んだ後、学校の運営メンバーの一員として働いた。一流のアーティストたちが集まるこのグループのユニークな点は、働いているメンバーもアーティスティックな活動をしていることが求められることだという。新海さんも、通訳や翻訳などの仕事をしながら作品を作って発表するという活動を続けた。アーティストとして作品を発信し続けることの重要性をこの学校での経験で学んだという。アートは言葉でありコミュニケーションのツールであるというのが新海さんの考えで、作品を発表していくのと同時に地域のコミュニティにも貢献していくことを目指していきたいと考えている。
消費文化からエコへ、時代の動きを捉えていく
サンシャインコーストに移住して8年、やはりガラスアーティストである夫のウェインさんとガラス作品を作り続ける。ガラスを吹いて膨らまし、形作っていく伝統的なガラス工芸を習ってみたいとか、子どもに習わせたいという人から問い合わせを受けることも多い。今までは自分の作った作品を売ることに重点を置いていたが、将来的にはガラス工芸に携わりたい人たちに教える環境を作っていきたいと考える。現在、材料のほとんどをリサイクルのボトルや工程の途中で出るガラスの破片を利用し、環境面も意識した取り組みをしている。
9月15日から10月29日までポートムーディーのArts Centreで新海みゆきさんの作品展「Metaphysics and Glass」が開催されている。色使いがキレイなコップ、様々な形のボウルなどの作品が並ぶ。その他3人のアーティストによる写真や絵画が展示されている。
(取材 大島多紀子)
2011年9月29日 第40号 掲載