2016年10月20日 第43号

 創造的な教育が進んでいる国は、今頃ではフィンランドだという。それは、授業の中で話題になったことをテーマにして、それぞれの生徒が思い思いの作文を書くというものである。ある生徒は自分の想像力を働かせて自由な発想で不思議な話をつくり出したりするのである。そして、それぞれが書いたものをクラスに持ち帰り、それを皆で話しあい、さらに、内容を専門的に深めていくようなものであるらしい。

 僕もそれを真似してみようと思うのである。

 夏のパウエル祭が終わると、僕たち座ダイコンは次の公演の準備に入り、演目の検討が始まる。さっそく、僕は前から気にしていた『ごん狐』の話を劇の台本にしてみようと試みるが、原作とは、まったく別の『ごん狐』になり、今回の公演では無理ということになり、それならば、自らの解説を入れて創造的『新ごん狐』を説明しようと思うのである。

 

 『新ごん狐』

 むかしむかし、山奥に、兵十というお百姓さんと年老いたお母さんが二人で暮らしていました。もう夏もすぎ、深い秋の気配がただよい始めた頃、老いた母は、兵十に裏の畑に行きたいと言いました。その日は、寒い朝で霜が降りて、畑が白く輝いていました。

 母ー「兵十! 畑はいいな。また、元気になったら、畑や田んぼで働きたいのう。ああ、元気になりたいものだ。兵十、わしに元気がでると言うウナギを食べさせてくろ」

 兵十ー「おっかあ!今頃、ウナギがとれるわけがないぞ。だけど、おっかあの頼みだ。明日、ウナギをとりにゆくから、安心しろ」

 (昔の中国、堯舜という理想的な帝王がいた時代にある村の年老いた母が冬の季節に竹の子を食べたいと言います。年老いた母は、今でいう痴呆症であったのかもしれませんが、息子は、冬のさなか竹の子を探しに行くという話があります)

 母をつれて舞台そでに消えて、再び兵十のみ出てくる。  兵十ー「この間から秋の雨がよく降ったから、川にウナギがいるかもしれない。おっかあのためだ、ウナギとりの竹かごを川に入れてみるか」

 舞台端にある地蔵にウナギがとれることを祈りに行く。ごん狐、かげから覗いて見る。

 ごん狐ー「おや、兵十だな、川に小さなカゴをいくつも投げ入れて何をしているだ?兵十はばかだなあ。この寒いのに魚がとれるわけがない」

 兵十が地蔵からもどり、ウナギのカゴをあげ始めると同時に釣竿の糸を川に投げる。

 兵十ーどれもウナギは入っていないな。どれどれ最後のカゴをあげるか。やっぱりだめか。おや釣竿の浮きが沈んだ。どれどれ、急いで引き上げねば。よいしょよいしょ、ばかに釣竿が重たいな。きっと木の根っこでもひっかけたかもしれね。(一生懸命に釣竿をあげようとする)。おや、竿がグイ、グイと引っ張られる。これはおかしい。なにか大きな魚がかかったようだ。よいしょ、よいしょ。(魚と力くらべをしていると、魚が水面にあがってくる)。こいっは有り難い。ウナギだ。釣竿でウナギが釣れるとは、初めてじゃ。こいつは有り難い。  

 兵十、ウナギのカゴを置いて、大喜びで、地蔵へお礼のお参りにゆく。兵十が居なくなると、ごん狐はいたずら心を起こして、カゴからウナギを取り出して、ポンとウナギを川に投げかえす。

 まだ、ぼくが小学校の6年生くらいの頃、魚釣りの好きな父と、自家製の細い竹の釣竿を持ち、近くの池に魚釣りにでかけたことがある。父と僕は、釣り糸をたらして池の土手にジッと座り、鯉かフナが釣り針の餌であるミミズにかかるのを待つ。6月の雨上がりの薄曇りの日であった。時々、浮きが沈み、餌がとられるが、魚はなかなかかからない。そんな雨上がりの静かな午後の日、突然、ぼくの釣竿の浮きが深く沈む。ぼくは、たぶんザリガニだろうと思って竿を力を入れあげると、おおきなウナギであった。

 その晩は、母と父が、ぼくが釣り上げたウナギをさばき、こうばしいウナギの蒲焼が夕食であったが、まだ、今ほど抱負に食材も、スーパーのお店もない時代であった。

 (次号に続く)

 


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