2019年11月21日 第42号
みなさん、こんにちは。10月のバンクーバーは晴れが続きましたね。秋から冬は雨の多いバンクーバーですが今年の10月は14日連続で雨が降らず、63年ぶりに記録更新だったそうです。今月はどんなお天気になるでしょうか。
さて先月まで「どんなときも、そのままの自分でOK」という感覚、自己肯定感を育む言葉がけ、そして感情のスペースの重要性と怒りについてお話ししました。今回は3つ目の安心感の枠組みについてお話します。
安心感と枠組み
子供は、安心感の中でこそ多くのことを学ぶことができるといわれています。子供が安心して学ぶためには、今までもお話しした通り、そのままの自分でOKと感じられる体験がまずは必要です。そしてその体験をサポートするために、年齢に応じた枠も大切になります。
例えば選択肢という枠について。2〜3歳の子供であれば、親が決めた2つの選択肢の中から選んでもらうという枠組み。小さな子供にとって、多くの選択肢は不安になります。そしてこのくらいの年齢だと好きなものの数、また選ぶ理由はとてもシンプル。多くの選択肢があると選べなくなることも。選ぶことへの不安が増える場合があります。2つであれば、『自分で選ぶ体験』をストレスなく増やしていけるでしょう。子供は過度なストレスを感じずに自分で選ぶ練習ができます。この枠は、徐々に広げてゆくことができますし、お子さんの性格によっても様々設定できます。
実は子供だけでなく、どんな人にとっても自由や自発性はときに不安の要素になります。そんな“自由さ”には、無数の選択肢や可能性が広がることになります。一見良さそうですが、人類学者であるヘレン・フィッシャーは、人は9つの選択肢以上になると認知的負荷がかかると言っています。結果的に自由な環境は、「どうしたらいいか分からない」という不安が生まれやすいのです。自由という空間は、自分の内側に自己信頼と規範(枠組み)があるからこそ楽しめる空間だといえるでしょう。
この枠組みには、選択の数の他に、例えば、部屋のサイズ(大きい部屋か小さい部屋か)、遊ぶおもちゃの数、絵を描くときは紙のサイズ、道具の種類、そして遊びの時間枠、ルールなど、様々な形で枠組みを作ることができます。
この枠組みは、そのお子さんの年齢、もしくは発達の段階を考慮しながら、性格や個性に応じて変えてゆくことが望ましいと思います。特に0〜6歳児までは信頼・自律性や自主性を学ぶ時期。このような枠組みの中で、ルールや規範を学んでゆき、自己信頼、自律や自主性を促してゆきます。
自由と枠組み、不安と安心は繋がっていているのですね。枠組みがあるからこそ、自由を楽しめる。このような安心感や枠組みが心の中に育てば、自由な環境で多少の不安を感じても、自分で枠をデザインするという、むしろ無から有を創造することも可能となってゆきます。
加藤夕貴
MA, RCC ((BC州認定臨床心理療法士)、認定表現アーツセラピスト 想像して創造する遊びの中で、気づきと心の成長を促す、表現アーツセラピーを中心に、バンクーバーと日本で心理カウンセリングやワークショップを行なっている。
HP:http://www.youkikato.com/japanese.html