2019年7月18日 第29号
〜言葉がけ〜
先月に引き続き、自己肯定感についてお話ししていきたいと思います。
まず自己肯定感とはどんな感覚なのでしょうか。簡単に表現をすると、「完璧でないけれど、このままの自分でOK!」という感覚です。失敗や成功の有無で、たとえネガティブな気持ちになったとしても自分の存在価値自体が揺らぐことが少ない状態です。
このような自己肯定感は人が初めて関係を結ぶ親子の関係性で育まれ、それが他者とのやりとりが広がり、その後コミュニティや社会での活動へとつながってゆきます。どのような育みが肯定感を育てる時にサポートとなるのか、大きく分けて3つの要素があります。それは、①言葉がけ、②感覚や感情のスペース、そして ③安心感の枠組みです。今回はまず言葉がけからご紹介します。
言葉がけが親子の関係性で最も大切なのは受容です。どのような言葉がけが、より人は受け入れられていると感じるのでしょうか。それは「すごいね」「上手だね」という褒める言葉以外に行動や努力の過程をそのままを伝えるという、ニュートラルなフィードバックがプラスになります。
褒めることは、時に良い・悪いという、条件付きの受け入れ姿勢につながり、ポジティブな言葉を強調すればするほど、逆の「失敗してはいけない」というプレッシャーにつながる危うさがあります。従って、褒める言葉以外のやりとりを増やしていくことも大切です。
アート表現では、例えば親が子どもの絵を見て、「上手!」よりも、「ひらひらした線が蝶々に見えるね」と、子どもが表現したままをフィードバックするとい う方法があります。そうするとお子さんは、自分の絵についてもっと伝えたいという気持ちになるかもしれません。また絵に描かれた想像の世界を話してくれるかもしれません。ニュートラルな言葉がけが、対話を広げるきっかけにもなり、 より繋がりは促されます。
このニュートラルな言葉に、気持ちを伝えるという方法もあります。例えば「ひらひらした線が蝶々にも見えて、みていると楽しくなるね」と感情を入れると、 自分の描いた絵で楽しく感じてもらえる、自分の絵が相手に良い影響を与えているという体験になります。ただ上記の体験とは逆に、相手に不快を与えてしまったという体験も人生には出てきます。そんな時、罪悪感になることがあります。この罪悪感は決して悪いものではなく、罪悪感がある事で、行動を制御することを得てゆくので、社会の一定の規範の中で生きていく上では必要な感情でもあります。
ただその罪悪感が、自分の行動に対するものではなく、自分の存在価値に繋がった時、恥の意識になり、自分の中のポジティブ以外のネガティブな感情を受けいれる事が難しくなります。すると相手を傷つけることへの恐れから、私は受け入れてもらえないかも、という恐れと傷つきやすさが増し、結果的に人と関わることが怖くなります。だからこそ様々な感情や気持ちのやりとりを表現するスペース、どんな感情であっても、存在自体は受け入れられるという体験も重要になります。ここに繋がるのが、肯定感を育む上で大切な事二つ目の「感覚や感情 のスペース」です。次回はこの事についてお話します。
加藤夕貴
MA, RCC ((BC州認定臨床心理療法士)、認定表現アーツセラピスト 想像して創造する遊びの中で、気づきと心の成長を促す、表現アーツセラピーを中心に、バンクーバーと日本で心理カウンセリングやワークショップを行なっている。
HP:http://www.youkikato.com/japanese.html