2019年6月20日 第25号
バンクーバーは、新緑が美しく、実に気持ちの良い季節になりました。四季や日々の移り変わりは実に変化に富んでいます。それは私たちの人生のように。
私たちの人生は、幸せな時もあれば、落ち込んでしまう時もある。楽しい時もあれば、怒りが湧き、悲しみを感じることだってある。様々な出来事があり、それによって私たちの気持ちも季節のように変わってゆきます。
そんな変化の中にあっても、私たちの存在自体、コアな部分は実はさほど変わりません。そのコアな部分というのは、唯一無二の存在であるという部分。そのままの「あなた」は、かけがえのない存在だということです。そのように自分を肯定的に捉えることを、自尊感情、または自己肯定感(英語ではセルフ・エスティーム)と言います。そして自己肯定感を育てていく事が、生きる力や乗り越える力となってゆきます。
私たちは、辛く苦しくなるような気持ちや症状があれば、当然のことながら、それらを変えたい、無くしたいと思います。けれど、変えたいと思えば思うほど、変えることにこだわり始めます。うまく変えることができなければ、自分を責めるようになりがちです。変わるどころか、なかなか変われずに悪循環になり、滞る感じがします。
実は、変えることだけに集中すると、変わることから遠ざかります。なぜなら、それはいつしか「とらわれ」になるからです。精神科医でもあり、依存とマインドフルネスの研究者でもある、ジャドソン・ブルワー氏によれば、このように欲求にとらわれた状態の時、脳の後帯状皮質という部分が活性化されるという事がわかっているそうです。その後帯状皮質の活性化に脳が騙されることで、とらわれから抜け出せなくなる、という悪循環が起こります。そのとらわれから脱却するためには、衝動から距離を置くことが必要だとブルワー氏はいいます。
「私という存在は、どんな症状があろうと、どんな問題や状況にあろうと、 かけがえのない存在である」
この言葉を、深い深呼吸とともに感じてみてください。今の自分を肯定できると、それは安心感へとつながります。すると不安から距離ができ、結果的に「変えたい!」という衝動からも距離を取りやすくなります。ブルワー氏は、衝動からの欲求と距離ができると、後帯状皮質が静まるために、欲求のとらわれから抜けやすくなる、と言っています。
問題や症状の原因、また子供時代のトラウマによっては、自分自身を肯定する事が難しい時もあります。どのくらい時間がかかるのかは人それぞれです。このとらわれから抜けるには、問題や症状を真っ向から対峙して取り組むよりは、今、ここでの自分を肯定することの方が、癒しへの扉は開きやすくなります。次回は自己肯定感の育み方を紹介できたらと思います。
最後に私の大好きなブレネー・ブラウンさんの言葉をみなさんへ。 私たちは、失敗しようとも、物事を達成できないとしても、 今のままで十分な存在なのです。
By ブレネー・ブラウン
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ブレネー・ブラウン: 傷つく心の力
加藤夕貴
MA, RCC( BC州認定臨床心理療法士)、認定表現アーツセラピスト 想像して創造する遊びの中で、気づきと心の成長を促す、表現アーツセラピーを中心に、バンクーバーと日本で心理カウンセリングやワークショップを行なっている。
HP:http://www.youkikato.com/japanese.html
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