「子供たち、エルフの存在を信じてる?」とママ友から聞かれた。北米で言うエルフとは、小さい妖精のことで、サンタクロースのヘルパーとして知られている。緑の衣装をまとい、クリスマスに子供たちに贈るオモチャを作るなんともかわいい妖精たちである。だが、彼女の言うエルフとはそのエルフではなくて、『棚にいるエルフ ー The elf on the shelf』だと言う。このエルフは、一般的に12月の初期に家にやって来るらしい。そしてクリスマスイブまで滞在する。もしやクリスマスツリーの下に置いてあるプレゼントが盗まれないように見守ってくれるのか、それともサンタが迷子にならないようにヘルパーとして活躍するのか、棚のエルフの存在を知らない私は、そんなメルヘンチックな想像を膨らませていた。

 だが、実際は違った。このエルフ、子供たちを見張るためにやってくると言う。毎晩子供たちが寝た後に、サンタのいる北極へ戻り、その日一日の子供たちの様子を、いわば良い子だったか悪い子だったかを報告するらしい。なかなかイヤな奴ではないか…(笑)そもそもサンタクロースには「良い子と悪い子のリスト」が存在する。悪い子リストに自分の名前が入ってしまえば、クリスマスプレゼントに石炭が届き、良い子リストに名前がのれば素敵なプレゼントが届くことになっている。そのお陰でこの棚のエルフの存在が、ママ達の間で好評だったりするようだ。「悪いことしたら棚のエルフがサンタに―」というわけだ。

 クリスマスが近づくにつれ、陽気なクリスマスミュージックに幻想的なイルミネーションに町は包まれ大人ながらにワクワクしてしまうが、それ以上にサンタやエルフの存在を信じている子供たちにとっては、意外と複雑な心境なのかもしれない。「ママ、うちにはエルフは呼ばなくて良いからね―」と我が家ではすでに子供たちから念を押されていたりもするのだ。

 

2005年に出版された本書を元に棚のエルフの伝統が北米で浸透したと言われている。(“The elf on the shelf”著Carol Aebersold、Chanda Bell イラストCoë Steinwart)

 

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