2月に入った。今年は珍しく新年の目標をまだ忘れていない。いや正確には、私の場合、忘れてはいけない状況であると言ったほうが正しいのだろう。ヒビの入ったシワだらけの「かかと」もお手入れすれば10歳は若返った自信がある。勢いあまって、次に足を踏み入れてしまったのは、ピンクと黒のセクシーな内装で、女の私でさえも外から店内を見るだけでドキッとしてしまう「Victoria’s Secret」だ。豪華モデルを使用してのランジェリーファッションショーは、今や父親になり夜中にこっそりポルノを観れなくなった男性から、全くそうでないシングル男性まで、とにかく世界中の男性から絶大な人気を誇っている。というコトもあり、ここの下着は夜の実用性を重視したイメージが断然強く、幼児ふたりの育児にあたふたしていた新米母にとっては、かなり敷居の高い場所であった。だが、10歳若返った私の「かかと」は、どうやら私の心まで若返らせてくれたようで、気がつけばブラ・フィッティング専門家のアンジーに連れられ更衣室にいた。

 「すごーい!」

 下着とは正しいものを選べばこんなに人をセクシー見せてくれるものなのか。アンジーが丁寧にサイズを測り、次々と好みに合ったブラを持ってくる。不思議と恥ずかしいという気持ちが生まれるわけもなく、妹と一緒に買い物をしているような気分。「これはダメ。これはキープ」と更衣室のなかでは率直な意見が飛び交うファッションショーが始まった。脇の下の脂肪だろうと思っていた場所は、実は胸の一部だったりもして、それに合わせてカップのサイズも変わる。自分の体ながら新しい発見だ。言うまでもなく、私が今まで信じていたブラのサイズも、見事、間違っていた。

 こんなに自分の胸にフィットする完璧な(かつセクシーな!)ブラをつけたのは初めてかもしれない。今度ここに来るのは、いつになるのだろう。とりあえず気に入ったブラ3枚はすべてキープした。もちろん上下揃ってないと、来た意味がない。「せっかくなんだから黒ばかり買わずに、もっと赤とか楽しい色を着てみたら?」と言われるまま、ティファニーのネックレスが似合うアンジーとの買い物は続いた。 家に帰って早速今日買ったものを着てみた。大満足! 久々にみなぎってくる内からの自信は、人の心を開放してくれる。下着の力は決して侮ってはいけない。

 

System.String[]

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。