オンタリオ州出身のシンガー、ジャスティン・ビーバー(22)がオタワに来た。今年3月からワールドツアーで現在北米を回っているという。ビーバーがオタワに滞在した2日間は地元紙でも何度も取り上げられ、街中がこのスーパースターの行くところを追っているかのような雰囲気だった。カナダからこんなビッグスターが生まれただけに、彼がオタワでどんなことをしているのか気になっていたのだろう。
だが残念なことに今回の訪問で話題になったのは、バーでのチップ騒動だ。ダウンタウンにあるバーにビーバーが飲みに入ったもの、支払い担当をしていたスタッフがチップを払わなかったと、バー側が苦情のツイートをした(ビーバーは小さなビール1本注文しただけだという)
確かにバーやレストランでの支払いの際はチップも添えて払うのがこの国での慣習だ。だがその慣習のない人がお店に来てしまうと払わないこともあるだろうし、たとえ慣習のある客のなかでも他のことに気をとられチップを払うのを忘れてしまうこともあるだろう。観光客で賑わう場所に立地している店側としては過去にチップを払わない客に出くわしたことはあるはずだ。だからなぜ店側はツイートで、ビーバーのスタッフがチップを払わなかったことを世界中に知らせる必要があったのか、疑問に思った。まさかこの店ではチップを払わない客が入るたびに顔写真付きで批判ツイートしているわけではないだろう。
逆に、ジャスティン・ビーバーのような大物スターがお店に現れると、それだけで話題になり店は繁盛する。チップ云々は別として、店側は「ビーバー、お店にきてくれてありがとう」、いやビーバーだけに限らず、お客が誰であっても、来客ありがとうの立場ではないだろうか。やはり客があってこそ成り立つのがビジネスだと思う。
翌日ビーバーは例のバーに戻りチップを置いてオタワを後にした。店側は100USドルの写真をツイートして喜んでいたが、このニュースを読んでこの店の対応を残念に思ったのと同時に、四六時中自分の行動を細々と監視されジャッジされる22歳になったばかりのビーバーをかわいそうに思ってしまったのは、私だけではないだろう。
■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。
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