重い腰を上げてフェイスブックを始めることにした。フェイスブックの存在を知ったのはかれこれ10年ほど前になる。当時、私は大学生。休み時間になれば、友人たちの間で話題にあがり、友達申請のメールもちょくちょく届くようになっていた。ちょうどフェイスブックが北米でブレイクし始めた頃にあたる。
その後、フェイスブックに関するニュースは今や、後を絶たない。友達の投稿を読んで、自分だけパーティーに呼ばれなかったことを知る人や、「いいね!」ボタンを押してもらえなくて悲しむ声、またフェイスブックに書いた投稿のせいで仕事を首になる人など、否定的な出来事を取り上げたニュースが目立つ。実際、友人のなかにはフェイスブックを始めてしまったことを悔やんでいる人もいる。その後続いて、ツイッターやインスタグラムなどのSNSも次々と登場し始め、私は素人ながらに、フェイスブックは消えるだろうと勝手な判断を下し、手つかずのままでいた。
だが、10年経った今でも、やはり聞かれる。「フェイスブックしてる?」と。どうやらフェイスブックは消えるどころか、私たちの生活にしっかり定着してしまったようだ。そして私のようにフリーランスの仕事をしている場合、逆にしていないほうが驚きのようだ。結局のところ、どんな仕事にしても、人と人とのつながり抜きには、語れない。フェイスブックは、人と人とをつなぐ素晴らしいツールである。
そしてかなり遅れて、先月フェイスブックデビューを果たした。「あ〜!この人は!」とスクリーン上にポンポンと懐かしい顔が出てくる。「繋がりたいけどこんなに時間がたっている。いまさら友達申請していいのか?」と躊躇してしまう。そんなことを弟にボソッと話したら、「その為のフェイスブック!ためらわず、さっさと友達申請しまくりなさい」と私の背中を押す。シャイな性格はネットの世界にも反映される。
ゆっくりゆっくり輪が広がっていく。過去に人生を交差した人たちと、遠く離れていても、再度ネット上で繋がれるのは、嬉しいものだ。1カ月が経ちやっとフェイスブックの使用に慣れてきた私は、今日初めて、日本に帰国してしまう友達に聞いてみた。「フェイスブックしてる?」と。
■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。
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