2018年4月19日 第16号

イースターも終わり、冬の間は枯れていた我が家のラベンダーには、最近緑色が戻り始めました。そろそろ野菜の種も植えなければいけません。そんな季節の移り変わりのように、薬の費用についての質問も時間をかけて変わってきています。

 

 1、ジェネリック薬とは、特許が切れた医薬品を、他の会社が同じ原料を使って製造・販売する薬のことで、後発医薬品とも呼ばれます。ようやく最近になって日本でもジェネリック薬が普及してきましたが、後発医薬品大手で、トロントに本社を置くApotex社は1974年創業。つまり、カナダでは1970年代からジェネリック薬が使用され始め、現在ではジェネリック薬が販売されている薬については、それを使うのが当たり前という環境にまで至りました。1980年代には、ジェネリック薬は先発医薬品の70%の価格で販売されていましたが、経済協力開発機構(OECD)加盟国との国際的な比較により繰り返し是正され、現在では先発品の20−30%(注:例外あり)で販売されるようになりました。

 BC州政府の運営するPharmacareでは、ジェネリック薬の存在する医薬品については、その価格までしか薬剤費がカバーされません。これをLow Cost Alternative Program (LCA)と呼びます。ジェネリック薬では先発品と同様の効果を得られない人、信用できない人、アレルギーのある人は、製造されている限り、先発品を購入することは出来ます。

 しかし、免責金額に到達している人の場合、先発品とジェネリック薬の差額は自己負担となり、これに例外はありません。免責金額に未到達の場合、全額自己負担となりますが、ジェネリック薬を基準とした支払額のみが、免責金額に向けて計算されます。

 一方で、民間保険会社も追随してジェネリック薬を推進し、費用負担に制限を設けるプランが非常に多くなりました。アレルギー等の特別な理由で、先発品のみしか使用できないという場合、例外的な負担が認められるかどうかは民間保険のプラン次第となります。直接問い合わせる価値はあります。

 

 2、PharmacareのReference Drug Program(参照価格薬プログラム、RDP)を聞いたことがある人がいるかもしれません。同一の作用機序により、同程度の薬効を示す薬はいくつもありますが、これらの薬の価格は通常異なります。その中でもより安価な薬の値段を参照価格、すなわち最大支払額とする方針を反映したのがRDPです。免責金額に未到達の方の場合、参照価格薬のコストを上限として、免責金額に向けて計算されます。

 例えば、悪玉コレステロールを下げる薬の一つにHMG-CoA還元酵素阻害薬(名前の最後にスタチンとつくもの)と呼ばれる6つの薬ありますが、このうちアトルバスタチンとロスバスタチンがPharmacareの参照価格薬とされています。簡単にいえば、これ以外の薬が処方されると、薬の値段が高くなる訳です。

 RDPが適用されるのは、以下の6つの薬効群です。 Angiotensin converting enzyme inhibitors (アンギオテンシン変換酵素阻害薬;高血圧、心不全治療薬)、Dihydropyridine calcium channel blockers (ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル拮抗薬;高血圧)、Histamine 2 receptor blockers (ヒスタミンH2受容体拮抗薬;胃潰瘍、逆流性食道炎)、 Angiotensin receptor blockers (アンギオテンシンII受容体拮抗薬;高血圧、心不全治)、Proton pump inhibitors (プロトンポンプ阻害薬;胃潰瘍、逆流性食道炎)、HMG-CoA reductase inhibitors (HMG-CoA還元酵素阻害薬:高コレステロール)。

 例え日本語でも薬効分類名を唱えることは非常に難しいと思いますが、薬の値段に関わりますので、このリストを片手に薬局に行って頂けると便利だと思います。

 さて、当初の予定では、このシリーズを3回で終わりにするつもりでしたが、まだどうしても書いておきたいことがあります。そこで予定を変更して、あと1回だけ薬と保険のお話を続けたいと思います。

 

(注:AdalatXL錠やVentolin吸入薬では、例外的にジェネリック薬と先発品との価格差が非常に小さい。)

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

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