2017年3月23日 第12号
一口に認知症といっても、その原因によりいろいろな種類があります。その代表的なものが、「4大認知症」と呼ばれるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症です。中でも最も罹患者が多いのが、アルツハイマー型認知症です。男性よりも女性にはるかに多く、他の認知症の患者数が横ばい傾向にあるのに対し、増加傾向にあるとされています。
アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ」や「タウ」というタンパク質が脳内に蓄積し、神経細胞が壊れて減っていくことで、認知機能に障害が現れると考えられています。脳全体も萎縮し、握力や脚力、運動神経、咀嚼力など、体を動かして動作を行うための身体機能が失われていきます。また、最近の出来事を忘れてしまうという症状(短期記憶障害)は、記憶を司る脳内の「海馬」に病変が起こることによりますが、この変化は、症状が出る10年も20年も前から起き始めているということがわかってきています。
アルツハイマー型認知症の一部には、遺伝性のものもあるといわれており、家族性アルツハイマー病と呼ばれています。検査をしても、事前にわかる確率は100%ではありません。家族や親族が家族性アルツハイマー病とわかっている場合は、自身の発症率が高まるため、早期発見がより重要になります。
アルツハイマー型認知症の代表的な症状が「物忘れ」ですが、老化による一時的な物忘れとは違い、出来事の体験そのものが記憶に残らないため、思い出せません。また、判断力が低下し、自分が取ろうとする行動が良いのか悪いのかがわからなくなります。症状が進行すると、段取りが取れなくなり、計画を立てながら行う作業ができなくなります。抽象能力も低下し、曖昧な表現がわからなかったり、共通点のあるものの違いがわからなくなります。他にも、見当識(状況を把握する能力)に障害が現れ、時間、季節、場所や、方向感覚が失われ、違いが区別できなくなります。毎日会う家族以外の人がわからなかったり、自分の子供を孫と間違えるなど、相手と自分の関係を間違えることもあります。
これらの症状は、忘れたり、わからないことが原因です。怒ったり責めたりしては、本人が興奮、困惑したり、恐怖心を感じさせたり、自尊心を傷つけてしまいかねません。辻褄が合わなくても、話を合わせることで対応し、病気のせいだということをまず家族が理解することが大切です。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定