2017年3月2日 第9号

 「認知症って、年をとらないとならないんでしょう?」 認知症は誰でもかかるという認識は浸透してきましたが、やはり、高齢者がかかるものという認識が一般的なようです。しかし、若い世代でも認知症と診断されることがあります。「若年性認知症」と呼ばれ、65歳未満で発症する場合を指します。

 2009年の厚生労働省の調査によると、若年性認知症は女性よりも男性に多く、平均発症年齢はだいたい51歳。脳血管性認知症とアルツハイマー型が圧倒的に多いという結果が出ています。まさに働き盛りの世代にあたり、稀に、30代で認知症と診断されるケースもあります。

 若年性認知症の初期症状として特によく見られるのは、「記憶障害」や「見当識障害」です。物忘れのため、仕事やプライベートで大切な約束や予定を忘れてしまうことがあります。約束や予定そのものを忘れてしまうため、忘れたことは思い出せません。また、その日の日付や、自分が今どこにいるのかがわからなくなり、書類に日付が書けないことや、よく出かける場所で迷子になることが増え、おかしいと気付く場合もあります。

 また、認知症の初期症状が現れ始め、仕事や生活に支障が出てきても、まだ若いという先入観があるため、認知症と気付かなかったり、診断を受けても、うつ病や更年期障害などと間違われることもあります。そのため、正しい診断までに時間がかかることが多いこともその特徴です。

 現役世代ですから、 認知症により仕事に支障が出てしまい、特に一家の大黒柱である方が仕事を辞めざるを得なくなった場合、家族の生活が立ち行かなくなります。生活費だけでなく、子供の養育費や学費、住宅ローンなどが支払えないことにより、それまでの人生設計そのものに影響することになりかねません。また、この年代は、既に親の介護をしている場合が多く、介護が重なることで、介護者への精神的、肉体的な負担がより大きくなります。介護者が「介護うつ」になってしまうケースも当然増えてきます。

 しかし、一般社会だけでなく、医療や介護の現場でも若年性認知症の認識が不足しているため、支援も十分とは言えません。例えば、在宅介護が難しくなり、介護施設への入所が必要になっても、入所先は、高齢者と同じ施設しかありません。施設側が、若年性認知症の方の入所を積極的には受け入れない傾向もあるようです。

 自分はまだ若いからと、高を括ってはいられません。発見を遅らせないために、若いからこそ、認知症について知っておく必要があるでしょう。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

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