2017年5月4日 第18号

 子育てにおいて、あなたが一番ストレスに感じていることって何ですか?一般的には、 子供がなかなか親の言うことを聞いてくれなかったり、子供の態度に手を焼いてしまうと、フラストレーションは溜まっていきますよね。子供に自我が芽生え始めると自己主張し始めるので、注意しても叱っても、親の言うことを聞いてくれなくなることも多くなるので、「もうお手上げ!」という気持ちになってしまうかもしれません。ですが、そのときに叱りしすぎてしまうと、 まだ幼い子供の心は、自分の「態度」を怒られているというより、「自身」を拒否されているように感じてしまう傾向があります。そうすると、子供は徐々に自信とやる気をなくし、もっと悪い態度をとることで親からのアテンションを得ようとしたり、いい子を演じて親の愛を勝ち取ろうとし始めるかもしれません。結果、子供は自分の本当の気持ちに気づけなくなってしまったり、自分を表現する力も育たなくなってしまいます。

 子供の悪い態度を注意することはとても大切ですが、ただ叱るだけになってしまうと、子供の心が萎縮してしまいます。子供を叱るときには、上に述べたように、「態度や行動」を叱っているのか、「自身」を叱っていないかに意識を向けてみましょう。例えば、子供がお店で何かを壊してしまったとします。行動を注意するとは、「大丈夫?怪我しなかった?壊れちゃって、びっくりしたね。ここは壊れやすいものがあるから、お店にいるときは、これ触っていいってママに聞いてね」という感じ。さらにいいのは、お店に入る前に子供にどうしてほしいのか伝えること。「今からお店に入るけど、ここは壊れやすいものがあるから、何かに触りたくなったらママにまず聞いてね」など。子供「自身」を叱るときは、「また壊したの? いつもお店に来たら注意しなさいって言ってるでしょ。〇〇ちゃんはいつもママの言うこと全然聞かないんだから」という「自身」をアタックするような言い方になってしまっています。

 

叱るより「励ます」ことの大切さ

 「嫌われる勇気」という本により、最近日本でもアドラー心理学が認識されるようになってきましたが、アドラーは生前「子育て」にとても力を入れていました。「アドラー・ペアレンティング」の視点からお話しすると、子供の「心」を育てる上で一番大切なことは「励ますこと」だと言われています。 これは、子供の態度に問題があるときは、子供の心が「落胆 (discourage) 」しているからだとアドラー心理学は捉えているからです。アドラーは子育てで迷ったときは、 子供を「励ます」ことにフォーカスすることをススメています。それでは、「励ます(Encouraging)」ことと「落胆 (Discouraging)させる」の違いを見てみましょう。 「励ます」とは、結果ではなく、プロセスや努力のことを指します。 例えば、子供が宿題を終えることができず焦っているとしましょう。励まし方の例としては、「I can see you are putting a lot of effort into your homework. I know you are doing your best」。できない気持ちを育ててしまう言い方の例は、「I can see you are having a hard time. Let me do that for you」。 違いが分かりましたか? 励ますとは、結果がどうであれ、「今の努力を認めてあげる」ことにフォーカスしていますが、後者は、子供の「できないと感じている気持ち」を無意識で後押ししています。つまり、励ますとは、「子供の存在」を確かにしてあげることとも言えます。人間にとって、「自分の存在を認めてもらえる」ことほど心が安定することはありません。子供が 「自分の居場所はちゃんと家にある」と心から認識できるようになると、親に対しての信頼感もさらに深まり、子供の心はまっすぐとヘルシーに育っていってくれるでしょう。

( 文 Sunny Chung)

 


Sunny Chung MBA, MCP, RCC, CPF

カナダ・BC 州認定心理カウンセラー。BC 州認定アドラーペアレンティング・エデュケーター。クシ・アカデミー認定マクロビオティック・インストラクター。スピリチュアルカウンセラー。アメリカで心理学学士号&経営学修士、カナダで心理学カウンセリング修士取得。10 年間アメリカ・カナダの企業でコミュニケーション、人間関係、パフォーマンスなどをコーチング。心理カウンセリングはアドラー心理学、CBT、脳科学、およびアートセラピーをもとに、世界でここしかないホリスティックなカウンセリングを提供している。また、いろいろなテーマで各種セミナーを随時開催。5月はアドラー心理学に基づいた、「子供のこころを育てる」ワークショップ開催予定。カウンセリング&ワークショップの詳細はウェブサイトから。
www.sunnychung.ca

 

 

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