2017年4月6日 第14号

 自分の子供に「できる子」になってほしいというのは親心。ただ、一人っ子の場合や一番上の子供には、親の「できる子になってほしい」という気持ちが強すぎると、つい子供に構いすぎてしまうかもしれません。

 私も子供がかわいくて仕方なく、確実に構いすぎる親になるなぁと想像することができます。ただ、心理カウンセラーという立場から考えると「構いすぎる」というのが、子供の「心」にどんな影響を与えるのかを無視することができません。周りにいる大人たちを見ればよく分かるのですが、親から構われすぎて育った人は、「自分の力で考えることができない、なかなか自立できない、失敗することが怖い、自己責任が取れない」という、子供のような大人に育っている場合が多いようです。

 子供を「できる子」に育てたいというのは、どういう意味を持っているのでしょうか?「できる子」とは「勉強ができる子」のことでしょうか?「将来たくさんお金が稼げる、仕事ができる子」のことでしょうか?いわゆる「成功者」のことでしょうか?もし「成功者」になってもらいたいという親の思いが強いのであれば、その「できる子になってほしい」という思いを別の何かに変えることはできないでしょうか? 例えば、「できる子=成功者」と考えるのであれば、「できる子=器の大きい人」と言葉に置き換えられないでしょうか?

 「できる子」になってほしいと思うと、どうしても「できてるかなぁ」にフォーカスしてしまい、子供のできない部分に対し不安になってしまいます。そうすると、子供は親の気持ちを察し、失敗することが怖くなり、萎縮してしまいます。そういった子供は、大人になったとき、何かとチャレンジすることができなくなり、人生から逃げ出すような方法をとってしまう可能性が出てきます。

 また、子供のモチベーションをあげようと、褒めすぎるのも考えものです。北米では、「Good boy/girl!」や「What a beautiful picture!」というようなフレーズを使いますが、このようなpraising な言葉を投げかけすぎると、 子供は、褒められない部分の自分と向き合うのが怖くなり、とにかくいつも安全な道を探すようになってしまいます。

 このように、構って褒めて、「できる子供」に育てようと思ったのに、結果、子供に「できる心」が育たない。心から子供の未来を素晴らしいものにしたいと望むから、自分の子供の将来に対して、どんな思いがあるかを一度見つめてみてください。そして、その言葉の意味を考え、その言葉を自分に当てはめて、その言葉を心で感じてみる。もしその言葉で自分自身がプレッシャーを感じるようであれば、その親の思いは子供にとっては、はるかに重いはずです。それは親の思いであって、子供の思いではないのですから。だから、その親の深い愛の思いを他に言葉に置き換えることができるかどうか考えてみてください。

 例えば、「成功者になってほしい」を「器の大きな人間になってほしい」(自分の価値観に合う)という言葉に置き換えると、 言葉から自分自身にプレッシャーをあまり感じません。そして、子供に何を教えてあげることが大切なのかも自然に分かってくるような気もします。

 子供に何かできないことがあっても、できないこともあると教えてあげたい。その上で、自分自身に価値を見出せるような強い心が持てるように励ましてあげたい。そういう強い心が子供の器を大きくしていくのではないかと思います。

 子育ては迷うことだらけ。だからこそシンプルに、子供の「心」を育てるために、あなたが最も大切に思うことをたった1つだけあげるとすると、何が思い浮かんできますか?  どうぞ、その「ひとつ」を大切にしてくださいね。

( 文 Sunny Chung)

 


Sunny Chung MBA, MCP, RCC, CPF

カナダ・BC 州認定心理カウンセラー。BC 州認定アドラーペアレンティング・エデュケーター。クシ・アカデミー認定マクロビオティック・インストラクター。スピリチュアルカウンセラー。アメリカで心理学学士号&経営学修士、カナダで心理学カウンセリング修士取得。10 年間アメリカ・カナダの企業でコミュニケーション、人間関係、パフォーマンスなどをコーチング。心理カウンセリングはアドラー心理学、CBT、脳科学、およびアートセラピーをもとに、世界でここしかないホリスティックなカウンセリングを提供している。また、いろいろなテーマで各種セミナーを随時開催。5月はアドラー心理学に基づいた、「子供のこころを育てる」ワークショップ開催予定。カウンセリング&ワークショップの詳細はウェブサイトから。
www.sunnychung.ca

 

 

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