2016年5月12日 第20号

 今回は2012年3月、アルバータ州レスブリッジ市に住む18ヶ月の男の子がViral Meningitis(ウィルス性脳炎)にてカルガリーのチルドレンホスピタルで死亡したという事件についてお話をしたいと思います。

 通常、不慮の事故ということで、子供の死は書類送検され処理されるのですが、この事件は先月26日に彼の両親が実刑判決を受けるという結果になりました。その理由は両親が言葉を話せない子供の健康管理とケアーを怠ったためと判断されたからでした。この事件の背景にはNaturopathic Doctor (NDー自然医療医師)の存在と、両親の健康法に対する考え方が大変深く関係しており、皆さんにも当てはまることがあるかもしれない事件では、と思ったので取り上げてみました。

 この両親は自然治癒を含む、自然医療医学を好み、レスブリッジ市内のNDに診療を受けていたこともある人達でした。彼らは18ヶ月の男の子が息を引き取る2週間前に、ひいた風邪がなかなか治らず手こずっていました。

 風邪のひき始めには自分達が見立てたハーブをいくつか男の子に飲ませていたようですが、一時は症状が良くなったのにも関わらず、だんだんと元気がなくなり、周りの人が見ても明らかに風邪やインフルエンザではない何かの病気にかかっているから、医者に診せるほうが良いと助言されるほどだったそうです。

 そこで彼らは救急(ER)には行かずNDに子供を診せました。ところがNDが診断をした時には、時すでに遅し、男の子の脳炎の炎症は車のチャイルドシートに座れないほど悪化していました。NDは緊急処置のハーブを処方し、ERにすぐに連れて行くようにと言うことしかできませんでした。彼らはERに向かったのですが、その車中で男の子は、何度も無呼吸状態になり、最後には救急車でカルガリー市のチルドレンホスピタルに運ばれ、息を引き取りました。

 アルバータ州のレスブリッジを知っている方はご存知かもしれませんが、レスブリッジは小さな町で、病院等もありますが、救急対応や小児科に関する治療対応が完備されていないので、200km以上離れているカルガリー市まで移動する必要があるのです。子供が風邪をこじらせ脳炎を起こすことは珍しいことではないのに、両親は彼が3人目の子供でもあり、子育てに慣れが出てしまったからなのか、症状悪化のサインが出ていたにもかかわらず、いつまでも風邪で調子が悪いと判断して救急対応が遅れたため、彼を死なせてしまったのでした。 

 私はNaturopathic Medicine(自然医療医学)を修得し、素晴らしい医学・医療法であるということを実感しているからこそ、より多くの人達にもっと自然医療、代替治療という選択が医療にはあるということを知ってもらいたいと思っています。なので今回の彼の両親が取った、NDに子供を治療してもらおうとする行動はとてもうれしいことなのですが、自分だけで判断をせず、必ずプロ(NDまたはMD)に病気の診断をしてもらうことが大切です。ただ、NDではヘルスカードで無料の治療を受けることができないので、実費で診察費を支払うことになります。まず、ウォークインクリニックのMedical Doctor (MD)やファミリードクター(MD)で診断してもらい、その診断書を持ってNDに行って治療法の相談や処方を受けることもできます。治療を医薬品で行うか、自然医療品で行うかも選択ができます。まず病気の危険性を把握してから治療法を決定すると良いでしょう。

 今回の事件は、両親が自然医療を崇拝し、医薬品ではなく、自然医療品を選び使っていたので病気の進行をすぐに抑制できなかったため、カナダ全土のMDからサプリメントの使用に関する批判とNDへの批判の声が挙がっています。彼らがもっと早くNDに子供を診せていれば、初期の段階から殺菌効果の高いハーブを処方して確実に病原菌を減らし、的確に病気進行のフォローアップが出来たでしょう。それに加え、脳炎と診断した後でも、悪化する前に医薬品を投与することができたはずです。自然医療品を使うのではなく、医薬品を使うことをもっと薦めるべきだということもMDはメディアに述べているようですが、医薬品を使っていても悪化のサインをみのがし脳炎になっている子供はいるので、今回の事件を理由に自然治療法の選択肢を完全になくす事はできないでしょう。ですが、MD側の治療の考え方と違い、ND側の治療の考えはMDと協力し、自然医療法と従来医療法の両方を使い、患者が納得のいく方法で治療していきたいと思っているのです。 

 私も自然医大を卒業してもう14年、同級生がベテランNDとして、サプリメント会社の商品開発部で数多くの人達の健康をカナダ全土でサポートしています。今回のような事件があると、NDの立場、自然医療品・サプリメントの薬局などでの販売などを問題にする人達がいます。そんなことよりもMDとNDが一緒に協力すれば、もっと健康で長生きできる人もいるということをもっといろんな人に知ってもらいたいです。

 最後に…今回のように単なる風邪であっても、子供が新生児だったり、3歳に満たない子供であったりした場合、風邪の症状が1週間経っても良くならないようであれば直ぐに病院に!

 風邪で沢山出る鼻水が鼻の奥に溜まり、蓄膿や中耳炎を起こします。それから少し経つと脳炎になることがあります。大人の場合は肺に菌が入り込み、肺炎になり死亡することもあります。特に免疫力の低い老人や子供の「風邪」を甘くみてはいけないと言うことを忘れないでください。

 


草野明美 自然医学博士/Naturopathic Doctor

1989年にカナダオンタリオ州に父親の転勤で引越しをし、2002年にトロントにあるCanadian College of Naturopathic Medicine にて修業後、2年ほどバンクーバーの指圧学校で講師/カウンセラーとして自然治癒力の素晴らしさを教えていたが、日本でも同じことができないか一度帰国。その後日本で結婚、出産をし2013年7月に再度家族を連れてバンクーバーに戻ったあと、カルガリーMarket Mall内のNutrition Houseにてサプリメント健康アドバイザーとして勤務。現在は2児の母としてバンクーバーに在住。

 

 

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