2017年8月17日 第33号
今年のカナダは150 周年ということで巷では色々なイベントが行われていますが、今回はそれにちなんでメープルシロップについてお話をしたいと思います。カナダの国旗にも使われているメープルの葉は、サトウカエデ(Sugar Maple)というメープルシロップの原料になるカエデの葉をモチーフにしています。カナダ開拓時代、冬の間の食料難の際、先住民から教わりカエデの樹液を飲んで飢えをしのいでいたこともあり、メープルそのものが、厳しい自然の中での生活の象徴としてカナダの国旗に表現されているのです。カナダ国外、日本でも、メープルシロップはカナダの特産物として大変有名ですが、とても身体に良い食べ物であることを、皆さんはご存知でしょうか?
メープルシロップは冬の間にメープルウォーター(メープルサップ / Maple Sap とも呼ばれる)という樹液を木を傷つけて採取し、煮詰めることによってできるシロップです。メープルウォーターは97 パーセント水からできており、その中に糖質とアミノ酸、たんぱく質と、さまざまなビタミンとミネラルを多く含むとても栄養価の高い液体です。樹木が成長するために必要な多くのミネラル、ビタミンやたんぱく質が含まれた樹液は、樹木が枯れない程度に採取されます。バンクーバー近郊では、バンクーバーアイランドなどで作っているところもありますが、多くのメープルシロップはケベック州やオンタリオ州の北部の方で作られています。ケベック市に入るとメープルシロップをたっぷりと使ったカナディアン料理が食べられるお店がたくさんあります。はじめてそれらの料理を見る方はびっくりするだろうと思いますが、昔のカナディアン料理ではパンケーキだけではなく、肉料理からポテト料理などにも大量のメープルシロップがかけられています。今でも極寒の冬を過ごさなくてはならない地域では、欠かすことのできない栄養分が摂取できる食材として重宝されています。それに加え、通常使われる砂糖や蜂蜜と違い、糖尿病の治療にも大変効果がありますから、砂糖の代わりに使うのも良いでしょう。
メープルシロップ購入の時に、それぞれ色が違ったり、グレードが違ったりと、何がどう違うのかと悩む方も多いと思います。それに加え、以前はメープルシロップの識別法に関する定義や表記にあまり厳しい指定がなかったので、識別法もケベック州メープルシロップ協会やオンタリオ州メープルシロップ協会のもので表記されていたり、あるいはアメリカの識別法を使った商品が立ち並び、たまにカナダで作られていないのにカナダの特産品として店頭に並んでいたので、消費者側としては違いを認識して商品を選ぶことが大変困難でした。ところが今回、カナダ150 周年を機にカナダ国政府も2016 年12 月13日に、メープル関連・メープルシロップに関する食品の定義をはっきりとさせたので、店頭で並んでいるメープルシロップから、完全で安全なカナダ産メープルシロップを選びやすくなりました。
今回改定されたグレードシステムでは、まず単純にカナダ産か国外産かをはっきりさせています。カナダ国内で採取された樹液を使い、カナダ国内で生産され、5種目の品質管理項目を完全にパスしている物のみ「Canada Grade A Maple syrup, Made in Canada 」と表記され、カナダの樹液を使って国外で生産され、5種目の品質管理項目をパスしていても「Canada Grade A Maple syrup, Product of 国外」と表記されることになりました。そのため5種目の品質管理項目をパスできない物は「Grade A」をはずされ、ただの「Maple Syrup」となり、カナダ産の樹液を使わず国外で生産された物は「Grade A Maple syrup」と表記されます。それに加え、いわゆるメープル風味と言われる商品も、きちんとメープルの樹液を使っていない物は代用品(Substitute)と呼ばれ、「Maple」との表記は一切できなくなりました。色の違いに関しても簡単に4段階だけになり、自分の味の好みをはっきりと見極めやすくなりました。色の違いは樹液の採取時期の違いと共に味と液体の透明度区別をし、表記しています。たとえばGolden(薄い金色)表示のものはシーズンが始まってすぐに採取されたもので、味も薄く、色が濃くなるにつれてシーズンの後のほうに採取されたもので味も濃くなり、もちろんミネラルやビタミンの濃度も濃くなっています。
何にどう使えばいいのか悩むメープルシロップ。本物のメープルシロップが簡単に手に入るこのカナダにいるからこそ、ぜひともメープルシロップを色々なところでたっぷりと使ってみてください。そして砂糖の代用としてメープルシロップを使い、日々の生活の中に栄養価の高いメープルシロップを加えてみるのも良いのではないでしょうか。
草野明美 自然医学博士/Naturopathic Doctor
1989年にカナダオンタリオ州に父親の転勤で引越しをし、2002年にトロントにあるCanadian College of Naturopathic Medicine にて修業後、2年ほどバンクーバーの指圧学校で講師/カウンセラーとして自然治癒力の素晴らしさを教えていたが、日本でも同じことができないか一度帰国。その後日本で結婚、出産をし2013年7月に再度家族を連れてバンクーバーに戻ったあと、カルガリーMarket Mall内のNutrition Houseにてサプリメント健康アドバイザーとして勤務。現在は2児の母としてバンクーバーに在住。