2017年7月13日 第28号

今回は、ある程度の年齢になると気になる「骨粗しょう症ーOsteoporosis」についてお話をしたいと思います。骨粗しょう症とは、女性ホルモンの生成の低下が原因で起こることがある病気で、骨密度が減り、骨がスカスカ状態になる病気です。そのため、更年期になりかけから更年期の女性は特に、でも中には男性にも更年期が訪れる場合があるため、気にかけていたほうがよい病気のひとつです。

 

女性ホルモンとカルシウム、骨粗しょう症の関係

 女性ホルモンには、一般的に女性らしさを成長させる働きがあるだけではなく、隠れた働きがあります。その中に骨の生成、骨へカルシウムを蓄積させるという骨密度に関係する働きが含まれています。

 女性ホルモンは、主に女性器によって生成されますが、両性とも腎臓の上部にある副腎からも生成することができます。更年期の女性は、女性器からではなく、副腎のみで生成される女性ホルモンの量によってホルモンバランスが一時崩れるため、閉経、ホットフラッシュ、骨密度の低下、男性の場合では、骨の軟弱化、精子の未熟や性的意欲の減退などの症状を経験することになります。

 骨はカルシウムからできていると皆さんも知っていらっしゃると思いますが、骨を丈夫にするには、カルシウム以外のものが必要であるということも知っていましたか?

 数十年前から医師より骨粗しょう症予防のため、一日1000mg以上のカルシウムの摂取をするようにいわれていた更年期を迎えた女性たちは、サプリメントによってカルシウムの供給をおこなっています。ところが、近年の研究により、高カルシウムの摂取が、大きな他の問題を引き起こしていることがわかってきました。

 一般的に人間の体は、血液中のカルシウムの濃度を基に、自動的に判断し、骨を分解しカルシウムを作り、血中のカルシウム濃度をコントロールします。そのため、サプリメントとしてカルシウムを摂取すると、骨からのカルシウム流出を防ぎ、骨粗しょう症を防ぐことができます。ところが、必ずしも、そのカルシウムが骨に蓄積されるとは限らないということがわかってきました。骨に確実にカルシウムを蓄積し、骨密度を増やすのに、カルシウム以外にもマグネシウム(カルシウムばかり摂るとマグネシウムを体内から除去する力が増えるため、数十年前から骨密度を高めることを意識しているサプリメントにはカルシウムと共に常に含まれています)や、ボロンなどのミネラルに加え、ビタミンD、ビタミンK2も一緒に摂る必要があるということがわかってきました。そのため、今までカルシウムばかり摂取していた多くの女性の中に、骨に蓄積されなかったカルシウムが体内で石灰化され、血管や臓器の一部に結晶となり固まって、その場所が悪いと心筋梗塞、心不全、脳梗塞などの病気を引き起こしているとまでわかってきました。上記にあげた物の中にも摂取量を気をつけなくてはならない物があります。

 ビタミンKは血液を固まりやすくする性質をもっているので、すでにコレステロール値が高い方などは、気をつけて摂取しなくてはなりません。北米は日照時間が少ないので、ビタミンDが一般的に不足しているといわれていますが、油性のビタミンなので、多く摂取すると肝臓に蓄積していきます。大量の摂取、子供への必要量以上の摂取は私はあまりオススメできません。 

 人間の体内はとても多くの化学変化が起こっている場所なので、ビタミンやミネラルだから多少摂っても大丈夫と摂取される方もいると思いますが、きちんと理解してバランスよく摂取しないと、体内のホルモンや生成物質のバランスを崩し、病気を引き起こすこともあるので、必ず必要量以上を摂取するのは気をつけたほうがよいでしょう。

 幸い、骨を丈夫にするミネラルやビタミンは、身近な日本食や行動から摂取することができるので、気にかけながら生活していけば予防になるでしょう。カルシウム、マグネシウムは、にがりに多く含まれています。豆腐、緑黄色野菜などカルシウムを含んだ野菜とビタミンK2を含む納豆、それにビタミンDは体内で生成可能なので積極的に日光浴をするとよいでしょう。すでに症状を持っている人、診断を受けている人は、これらのことだけでは骨密度を増やすことはできないので、必ずサプリメントでのカルシウムなどの補充をしてください。代替治療の一環として考えるのではなく、予防医療の一環として食生活に取り入れると考えていただけると光栄です。

 とても天気の良い暖かい日になると、すぐに甲羅干しの亀のように外にぞろぞろ出てくるカナディアンは、ビタミンDを作らなければ!とDNAに刻まれているのではないかと思います。カナディアンに負けずに外に出て、日本食を食べる…。これが私の骨粗しょう症予防のプランです。

 


草野明美 自然医学博士/Naturopathic Doctor

1989年にカナダオンタリオ州に父親の転勤で引越しをし、2002年にトロントにあるCanadian College of Naturopathic Medicine にて修業後、2年ほどバンクーバーの指圧学校で講師/カウンセラーとして自然治癒力の素晴らしさを教えていたが、日本でも同じことができないか一度帰国。その後日本で結婚、出産をし2013年7月に再度家族を連れてバンクーバーに戻ったあと、カルガリーMarket Mall内のNutrition Houseにてサプリメント健康アドバイザーとして勤務。現在は2児の母としてバンクーバーに在住。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。