2019年3月28日 第13号

 バンクーバー日系社会の重鎮であるKさんがお元気に88歳の誕生日を迎えられた。そこで親しいお仲間さんたちと一緒に「米寿」をお祝いした。何か記念品をと考え、さらなる長寿を招いていただきたく「招き猫」の置物に決めた。実は最近、あることから東京・世田谷の豪徳寺に関心を持ち、また子供のころから世田谷に住んでいたので、豪徳寺が「招き猫」で名高いこともそこはかとなく知っていたからである。

 むかし鷹狩りをしていたお殿様が小さな寺の前を通りかかると、門の前で猫が招いているようである。そこでその寺に入り休憩した。するとすぐに激しい雷雨が降り出し、濡れずに助かった。そこで殿様は招いてくれた猫のお礼にその寺を作り直し、菩提寺とした。これが豪徳寺の招き猫の由来である。こんなエピソード、中学時代に聞いたことを思い出した。

 そしてこの招き猫について調べてみると、なかなか興味深い。まずこのお殿様が彦根藩主の井伊直孝であることがわかった。なるほど。彦根城築城400年祭のマスコット「ひこにゃん」が猫であることも、また桜田門外の変の井伊直弼(彦根藩主)の墓が豪徳寺にあるのも、この招き猫と関係があり、大いに納得である。招き猫の由来は諸説あるようだが、この豪徳寺のお話が一番身近に感じる。

 さて、この招き猫であるが、右手を挙げている猫と左手を挙げている猫がいる。確かに。では右と左と、どう違うのか? こんなこと今まで考えたこともなかった。

 一般的には右手は金運を招き、左手は人を招くと云われている。それゆえ、宝くじが当たる願いであれば、右手を挙げている猫が、また新規開店のお店には、お客が来るようにと左手を挙げている猫が良いとされている。

 しかし豪徳寺の招き猫はすべて右手である。これは武士と関係があり、刀は必ず右手で持つからとのこと。また招き猫には小判がつきものだが、豪徳寺の猫は小判を持っていない。チャンスは猫が招いてくれるが結果は自分の手でつかめとのメッセージとか。まことなりかな?

 でもあまりそのようなこと気にせず、自分が気に入った、可愛い猫ちゃんが一番ご利益を招いてくれるのでは。それはさておき、Kさんには招き猫にあやかって、健康長寿をいつまでも招いていただければ幸いです。

 

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