2019年2月28日 第9号

 カナダに移住して25年、当初はいろいろカルチャーショックを感じ、かなり戸惑いもあった。でも四半世紀を経て、今ではかなり慣れ親しみ、大いに共感を覚えるものもある。

 一例として、通勤にバスを利用しているのだが、乗客が降りるときに「Thank you」と言う光景をよく見かける。最初のころはちょっとびっくりしてしまった。どうしてお客が運転手にお礼を言う必要があるのか、「お客様は神様です」の日本ではあまり考えられない文化である。でもそのような光景を毎日見ていると、心和む思いがして、いつの間にか「サンキュー」と言ってバスを降りている自分がいた。いとおかし。

 特に近頃では日本語教師として、この日本語版「ありがとう」をバンクーバーに広めたく、お店などでも、「サンキュー」と「ありがとう」と両方唱えることにしている。スタッフがにっこりしてくれるとうれしくなるし、こんな経験も。あるお店で、かなりご年配の金髪女性が、「ありがとう」と「ありがとうございます」はどう違うのか、と質問してきた。思わずびっくり、そしてハグでもしたくなるほどうれしくなってしまった。そう、ハグの文化にもかなり慣れてきちゃったようである。

 確かにこちらでは「Thank you」をよく耳にする。謝罪はめったにないが…。日本語では「ありがとう」だが、使い方などに若干違いが、これは語源にも関係があるように思える。

 まず「ありがとう」は、漢字で書くと「有り難う」であり、有ることが難しい、すなわち、めったにないことの「有り難し」が語源である。だから「ありがとう」の反対語は「当たり前」で、初めて知ったときは驚いたが、なるほどである。

 平安時代の枕草子に「ありがたきもの」として「姑によく思われる嫁」や「主人の悪口を言わない部下」など現代も同じ、めったにない例として述べている。清少納言、いとおかし。

 そして中世になって、ありがたきものに対する神仏様への感謝の言葉になり、江戸時代に一般的なお礼の言葉として使われるようになったとされている。それゆえ日本人は「ありがとう」に少しおごそかな雰囲気を感じるのかも。

 一方、英語の「Thank you」は「I thank you」を略したとのこと。神仏などではなく「You」に対してのお礼なので、カジュアルな感じでどんどん使えるのであろう。こちらでは、言うことを聞いた子供に、親が「Thank you」という場面が多々ある。確かに「ありがとう」とは訳しにくいが、グローバルな今の世の中、日本でも親が子供に気楽に「ありがとう」と言えば良いのでは。

 日本の企業で働いている上級者から、なぜ日本の若者は、コンビニのレジなどで「ありがとう」と言わないんですか、とよく聞かれる。うーん、この素敵な「ありがとう」を「Thank you」と同じように、日本でもどんどん使ってほしい、と外国にいる日本語教師の熱き思いである。

 「アリが父さん、イモ虫母さん」失礼しました。

 

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