2018年11月22日 第47号

スミコさん、お誕生日おめでとうございます!(in 日本時間)

ここ数年、身の回りに大きな事件事象がありお伝えすることをサボってしまいましたが、やっとこさこのタイミングで贈ることができるようになりました。ちょっと前に今年投函するカードも入手したところなのですよ。…って、そういえば今のご住所はその前から投函したままで問題ないのでしょうか?もしもご都合お許しいただけるのでありましたのならば、ご近況なども併せてお教え願いましたら幸いと存じます。

2018年11月16日   ○○正直  

 

 この正直君は1993〜1994年頃には広島修道大学の学生、『正直』という名前が老婆は大好きだ。そして、明るく優しい有能な青年だ。当時、老婆はイベント企画会社を経営し、カナディアンロッキーで世界氷彫刻大会とか、コンサートツアーとかいろいろと企画していた。その企画のひとつ、バンクーバーの福祉状況体験視察のために彼は来加、多分ここに2〜3週間滞在した。彼は帰国後 卒業、何があったのか?その彼が自殺未遂事件と、その後遺症などがあり、苦しい中ずっと生きてきたようだ。しかし、その30年近く、ほぼ毎年この老婆に、楽しい誕生祝カードをいろいろ考えては送ってくれていた。 

 思えばこのイベント企画会社は結局、ノースバンクーバーのタロットカード占い師マリアの占いどおり、その時から13年間、セールスに歩かず、お客様の方から「お願いします」という形で仕事が続けられた幸運な会社だった。ただこれもまた、全く彼女の予測どおり、ちょうどその13年目、老婆は脳卒中で倒れ閉社した。しかし、老婆にとって大事で嬉しい事。

 それは閉社後も、とにかく、当時のお客様が、今もって何らかの形でこの老婆の友達となり、残っていてくれていることだ。キャピラノカレッジとの初期交換留学を始めた、山下先生はもう94〜95歳。私が名古屋へ会いに行くと、駅までご自分で車を運転して迎えに来てくださった。

 そして、今日の誕生日、何という時代なのだろう!「79歳」となった途端、フェイスブックで香港、アメリカ各地、日本各地の友達からの祝いメールが入信。つくづく「ああ、こういう時代になったのだぁ」、まさに「今昔の感、ひとしお」。ふっと、気づくとまた当時交換留学で多分キャピラノカレッジに来ていた学生の一人、今は数人の子どものお母さんになった女性の懐かしい名前があった。   

 その夜、昨年の今頃から『うつ病』で寝込んでいる息子が、今日は買い物に行った。一人で海産物の好きな老婆の誕生祝のために、あらゆる入手可能な(スーパーで)、カニ、貝類いろいろ、エビに、ロブスター、等々購入。まぁ、時間がかかった…が、それはおいしい!イタリア料理ができあがった。老婆が途中、彼を手伝おうとゆでたカニの殻取りを始める…と「ママ、それ布巾でくるんで叩いてよ!」という。まったく気がつかなかったが、カニの殻が飛び散るから布巾でくるみ、その上から叩けば殻は布巾の中に残る。何だか知らないけど、この老婆料理まで息子に教えてもらっているみたいだ。

   昨夜のこと、老婆がまだ所属している日系女性企業家協会の例会があった。会員の90%が参加したビットコインの勉強会だった。金融関係職の会員が説明。それは老婆にとっては、これまた未知の世界「ビットコイン」。その不思議な世界を深く考えさせられた。お金がなくてお金がある、そんな時代になっているみたい。 

 そこでまた、会員全体と笑顔を交わしながら老婆は自分のやってきたスモールビジネスの世界、昔を思い出すのだ。

 ビジネスとはJAL再建を果たした京セラの稲盛和夫氏が言う「ありったけを捧げる覚悟」、「不運なら、運不運を忘れるほど仕事に熱中しろ」「ビジネスの神髄は『3方』良し」などを考えると、ビジネスの大小は関係ない。そこでさらに思うのが、稲盛氏の言うこの「ビジネスの神髄は『3方』良し」言ってみれば「売り手に良し、買い手に良し、世間によし」。

 しかし、商売を行うからには、もうからねば意味がない。しかし、「利益は、その任務を懸命に努力し行った、その結果に対する、おこぼれ」に過ぎないのではないかという理念です。

 当時、老婆は3―3―3―1と考え商売を行っていました。つまり、利益の最初の30%は自社、次の30%は発注者、その次は請負人が30%、最後の10%は予備費です。

 多分、これは営利至上主義に陥ることをいさめたもので、経営の社会的責任というものを強調したものですが、実際はそこまで考えていませんでした。しかし、とても平和的な商法でした。  

 お金がなくて、お金があり、そして、お金がもうかる? どうして?もうかる?もうこの世は、そんな『ビットコインの時代』になっているのでしょうかぁ。いやいや、老婆にはそんな時代は生きられそうにありません。

 79歳の誕生日を迎え、過去を振り返り、この老婆は一人、「実は金もうけは上手でなかったかもしれない」、しかし、今、自分の回りに残っているたくさんの人々の「優しい思い」がある。この誕生日直前に体験した食中毒と神経障害での歩行難、さらなる難聴、そして息子の『うつ病』、毎日そんな自分を、その場その場で支えてくれる友人の親切。この老婆、たくさんの問題を抱えているが、お金に換えられない学びも、感謝も多い。

 一所懸命、働き、築いたものや、あの世へ行く前のやり残し等々、これらは皆「天からのプレゼント」なのだろう、と心ひそかに喜び、感謝で頑張ろうと自分を励ます。これって間抜けか、馬鹿か、うぬぼれかなのかなぁ?と笑いながら[澄子さん、誕生日おめでとう!]と、ひとりつぶやく老婆。

許 澄子

 

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