2017年8月24日 第34号
この夏、友人カップルが3週間ヨーロッパに行くことになった。彼らはオタワから40 分ほどのところにある小さな町に住んでいる。私は、森の中にひっそりと佇む彼らのログハウスが大好きで、遊びに行くたびに癒されてオタワに戻る。夫の通勤のことを考えると、とてもじゃないけど、この地域に引っ越すことはできない。でもいつか住めたらいいな〜なんて憧れている。そんな矢先、彼らの旅行が決まり、「留守の間、家の鍵を渡しとくから、いつでも寝泊りして」と寛大なオファーをしてくれた。ついでに車の鍵と郵便受けの鍵も置いて行った。車は「いつでも使って」郵便受けは「取っておいて」ということだ。
そして週末だけのハウスシッティングが始まった。これをハウスシッティングと呼んでしまうのには、厚かましい気もするが…。とりあえず、私も夫も子供たちも自然に囲まれたログハウスでのGetaway にワクワク。まずは忘れる前に庭の畑の水やりだ。広大な庭にはトマトやキュウリ、レタスやケールなど20 種類ほどの野菜やハーブがある。置手紙にあった私たちの仕事のひとつは「畑の水やりと畑の野菜をしっかりと食べること」。私たちが食べてしまっていいのだろうかとびっくりしたけど、レタスなんかは常に採らないと苦くなり、ハーブにしても放置すると雑草化するとのこと。「週末のサラダ」は子供たちが庭から準備することになった。お店に陳列されている野菜に見慣れている子供たちは、土からにょきにょきと出てくる野菜が珍しく「これはおいしそう。これはまだダメ」など考えながら選んでいる。
夜には焚火を囲んでスモアだ。マシュマロが苦手な私も、野外でローストして食べるマシュマロとなれば別だ。巨大な鉄製の串に刺したマシュマロを、色んな形に変形する橙色の炎の上でローストするプロセスは楽しい。グラハムクラッカーの間に、ローストしたマシュマロとチョコレートを挟んで、ガブリと一口。口に入れた瞬間、マシュマロとチョコレートがとろりと溶ける触感に、心身ともにほっこりする。「マシュマロをローストしたら、こんなにおいしいなんて」と、カナダで初めてスモアを試した日を思い出す。火を囲みながら、最近読んでいる本や、最近会った人の話など、思いついたことを家族でしゃべりながら過ごす、このゆっくり流れる時間が私は好きだ。
翌朝には、オタワに戻る準備を始める。ふとした瞬間に髪の毛から焚火の匂いがほのかに漂う。「あ〜、まだ髪の毛、洗いたくな〜い」と、そう思いながら昨日の焚火を思い出す。
子供たちは、庭の野菜を使ってサラダを担当
5 歳の娘が作ったスモアモンスター
■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。
ブログ: http://makoogura.blog.fc2.com