2019年12月19日 第51号

 気がつけば、2019年が終わろうとしています。昭和生まれの私が小学生の頃、元号が平成へと変わりました。そして今年はその平成が終わり、令和となりました。社会情勢の変化やテクノロジーの発達をみていると、元号だけに留まらず、時代の変化を感じずにはいられない今日この頃です。本日は、2019年最後の記事として、今年大きな話題となったいくつかのトピックを取り上げます。

これからの大麻の動向

 近年、カナダだけでなく世界を騒がせている話題といえば、昨年解禁された嗜好用大麻です。これも、新しい時代の象徴といえるかもしれません。カナダでの解禁から1年が経ち、大麻の売り上げは順調に伸びておりますが、大麻製造業者各社は事業を拡大し、またヨーロッパや中南米にも進出。大麻産業は国際的なビジネスへと変化しています。最近では「Cannabis 2.0」という言葉で表現されるように、食用や飲用といったあらたな嗜好品が、カナダで正式に合法化されました。お隣の米国では、国家レベルでは合法化されていないものの、30以上もの州で嗜好用大麻の使用が認められています。また、CBD(カンナビジオール)とは大麻草成分の一つで、植物由来の自然成分として、今年アメリカの美容・健康業界で大ブームとなりました。CBDには、心身がリラックスし、不安や心配を取り除き、不眠や慢性痛に効果があるといわれています。大麻草のもう一つの代表的成分であるTHC(テトラヒドロカンナビジオール)は、酩酊状態(いわゆる「ハイ」の状態)を起こすことが知られていますが、これに対して、CBDには有害作用や依存性はないといわれてきました。ところが、今年7月にはCBD入り飲食物がニューヨークで販売禁止となり、また、アメリカ食品医薬品局(FDA)は11月25日付けの報告書の中で、「CBDの安全性については、限られたデータしかなく、無害を裏付ける確証がない」と発表しました。それでも、近年、私が参加する勉強会やカンファレンスでは、毎回必ずといって良いほど、医療目的で使用される大麻についてのレクチャーが盛り込まれています。医療用と嗜好用、国によっては合法と非合法という法規の狭間で、大麻草が揺れており、今後の動向が非常に注目されます。年末に日本に行かれる方、大麻の持ち込みは違法ですので、くれぐれもお気をつけください。

バイオシミラー

 今年は「バイオシミラー」(biosimilar)という言葉を耳にする回数が、最も多い年だったと思います。バイオ医薬品とは、遺伝子組換えや細胞培養などのバイオテクノロジーを応用して製造された、ホルモン、酵素、抗体等のタンパク質を有効成分とする医薬品です。そして、このバイオ医薬品のジェネリック薬に相当する薬がバイオシミラーと呼ばれます。先行のバイオ医薬品の特許が切れた後に、他の会社が先行品と同等の効果と安全性をもつ医薬品として製造・販売します。最終産物が同一でも、製造上の複雑なプロセスが完全に同一にはならないことから、バイオシミラーと呼ばれます。

 バイオシミラーは、先行バイオ医薬品より薬の価格が安いので、患者さんの薬剤費の負担が軽減されるだけでなく、州政府にとっても医療費を大きく抑制することができます。去る11月には、持効型インスリンであるインスリングラルジンの先発品であるLantusインスリンを公費負担ゼロにすることで、バイオシミラーであるBasaglarへの切り替えを図り、医療費抑制に本腰を入れています。

食事の変化

 これほどまでに、人が食べ物を選ぶ時代はなかったのではないかと思うほど、食事が多様化しています。ベジタリアン、ビーガン、ケト・ビーガン、グルテンフリーと、様々な食事のスタイルを自称する人がいる一方で、目に見えて増えているのが、鉄分等のミネラルが不足している人の数です。西洋的には、サプリメントという形で外部から不足分を補うことが治療の中心になりますが、ここまで度が過ぎてくると、複雑な思いを抱かずにはいられません。日本食が健康食である所以は、一汁三菜により基本的な栄養バランスを保持し、肉類の摂取を少なくすることで、心臓・血管系の疾患を抑えることができるからです。また、発酵製品である納豆は立派なプロバイオティクスです。その一方で、白いご飯やお餅は、体内においては糖分という栄養素になりますから食べ過ぎは禁物です。

 皆様におかれましては、年末から年始にかけて色とりどりの食材を楽しんで頂き、また来年も元気にこの紙面でお会いできればと思います。食を楽しみ、十分な休養をとり、風邪やインフルエンザには気をつけ、どうか楽しいホリデーシーズンをお過ごしください。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

 

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