2019年11月21日 第47号

 秋生まれの私は、秋という季節が好きです。冷え込みはじめた秋の空気を吸い込み、また1年頑張ろうと思います。それなのに、気候の変化により、最近は気温の高めの日が多い気がします。変化といえば、歳を重ねるごとに代謝速度が落ち続け、ウエストが気になる今日この頃。散策好きな妻に同行してマツタケ狩りに何度か出かけました。といっても、歩いているのは1、2時間程度で、歩いて燃焼するエネルギーより、マツタケご飯を食べる量の方が多いので困ったものです。その一方で、薬局ではインフルエンザの予防接種がたけなわで、薬局は目の回るような忙しさです。皆さんは、今年のインフルエンザの注射、受けられましたか?

 薬局で薬剤師がインフルエンザの予防接種を行うようになってから、丸10年が経ちます。従って、予防接種という仕事は目新しいものではありません。ただ、今年の5月からマネージャー職を拝命したものですから、予防接種の時期は、いかに他の仕事への影響を最小限に留めて、滞りなく予防接種を行うかについて、人員管理を含めて綿密に作戦を練って10月に入りました。

 ところが(!)です。今年に限って、予期せずしてパブリックヘルスユニットからの公費負担のワクチンの入荷が遅れました。昨年は10月の一週目に予防接種を開始したのに対して、今年はサンクスギビングデーの後になって、やっとワクチンが入ってきました。その上、最初の300人分が届いたあとの入荷が続かず、予防接種が継続できない状態となりました。

 薬局としては、予防接種に対応するためにスタッフ増員をして特別シフトを組んでいるというのにワクチンのない日々が続き、もちろん本社からは人件費の削減命令が…。マネージャーという言葉の響きは悪いものではありませんが、実際には本社と現場の板挟みの中間管理職状態です(笑)。

 ちなみに、65歳以上の方を対象とした、「高用量」のインフルエンザワクチン(サノフィ社製造、商品名Fluzone HD)は、製造上の理由から12月までワクチンが発送されないとのこと。通常のワクチンの4倍量のワクチンで、より高いインフルエンザ防御効果を示すことが知られていますが、公費負担の対象ではなく、自己負担で約75ドル程度します。通常量のワクチンの供給不足の問題もあり、「私は肺疾患を患っており、インフルエンザのリスクが高いので、高用量のワクチンを受けた方がいいと思うのです。12月まで待って、高用量のワクチンを接種した方が良いですか?」といった質問を何度も受けました。しかし私は、「12月までにインフルエンザにかかってしまったら、元も子もありませんから、通常量のワクチンを早い時期に受けた方が良いですよ」とお答えしています。また、入荷が12月になるといっても、それが12月の初旬か中旬なのかは現時点では不明ですから、利用可能であれば通常量のワクチンの接種を受けるのがベストといえます。また、「今、普通のワクチンで注射を受けて、12月になったら高用量のワクチンを受けても良いでしょうか?」という質問も頂きました。このような方法の安全性を科学的に示す資料はありませんが、理論的には有害ではないと考えられます。

 一般的な情報として、今年のカナダのインフルエンザワクチン(最も一般的な公費負担の3価ワクチン)には、A型インフルエンザに対してA/Brisbane/02/2018 (H1N1)pdm09-like virusとA/Kansas/14/2017 (H3N2)-like virusが、B型インフルエンザに対してB/Colorado/06/2017-like virus from B/Victoria lineageというウィルス株が含まれています。今年は、BC州全体でワクチンの供給問題により接種者の数が伸び悩み、また日本では夏休み明けの9月からインフルエンザ感染者の増加が見られています。このような状況を踏まえ、この冬はインフルエンザの大きな流行が訪れるかもしれません。基本的な手段になりますが、人混みを避け、外から帰ったら手洗いとうがいをし、よく食べ、よく休養するようにしてください。

 最後に、今年は肺炎球菌ワクチンに関する質問を多く受けています。現在、「Pneumovax 23」(以下P23、65歳以上で全額公費負担)と「Prevnar 13」(以下P13、約120ドル)の2種類のワクチンあり、いずれのワクチンも、65歳以降に1回きりの接種を受けたあとの追加接種は不要です。両方のワクチンの接種を受けるのが最も効果的で、順番としては、P13の8週間後にP23を受けるか、P23接種の1年後にP13を受ける形になります。こちらも参考になれば幸いです。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

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