2016年10月20日 第43号

 10月に入って、だいぶ日が短くなり、気温も下がってきました。年末年始を日本で過ごそうという方は、そろそろお土産の準備に入ろうかという時期かと思います。日本といえば、去る8月、カナダ人の人気歌手ジャスティン・ビーバーもコンサートのために来日していました。しかし、そのときジャスティン以上に話題になったのは、麻疹の症状があったにも関わらずコンサートに足を運んだ一人の若者でした。そこで今日は、麻疹(Measles)とその周辺の感染症のお話です。

 麻疹はウイルス感染症の一種で、英語で「measles」、日本語で「はしか」とも呼ばれます。麻疹ウイルスの感染後、10〜12日の潜伏期間を経て発症し、まず38度前後の発熱、倦怠感、上気道炎症状(咳、鼻汁、くしゃみ、咽頭痛)、結膜炎症状(結膜充血、眼脂、羞明)が2〜4日間続きます。カタル期と呼ばれるこの時期が麻疹の経過中で最も感染力が強いとされます。その後、口腔粘膜の奥歯の対面に、やや隆起した白色の小斑点が認められるようになります。すると、一度は下降した熱が再び上昇し、それと共に麻疹特有の発疹が出てくるのが発疹期です。発疹は耳の後ろ、首、額から徐々に始まり、顔面、体幹部、上腕へと広がり、最終的には四肢末端にまで及びます。発疹出現後3〜4日すると回復期に入ります。熱が下がり、発疹も消えて、全身状態は改善してきます。

 麻疹の恐ろしいところは、その感染力の強さです。全員が免疫を持たない人の集団であった場合、麻疹患者が1人いるだけで、周りにいる免疫を持たない人の12〜18人が麻疹を発症するといわれています。ジャスティン・ビーバーのコンサートとほぼ同時期に、関西空港でも従業員と利用客の間に麻疹が集団発生しましたが、みるみる患者数が増えたのはこのためです。さらに、インフルエンザなど呼吸器感染症の多くが咳やくしゃみなどの飛沫感染によって拡散するのに対して、麻疹は『空気感染』します。空気感染とは、小さく軽い粒子が空中を長く浮遊し、感染しやすい状況を作り出すことです。つまり、感染者と同じ空間にいるだけで、麻疹に感染する訳です。

 麻疹は自然治癒する疾患ではありますが、合併症の頻度が高いことでも知られており、肺炎、心筋炎、中耳炎、クループ症候群、腸炎、肝機能異常を併発します。

 麻疹特有の治療や抗ウイルス薬はありませんから、それぞれの症状に対して、個別に対応するしかありません。しかし、麻疹はワクチン接種により感染予防ができます。BC州では、子どもが12カ月になったら1回目の接種を、4歳から6歳の間に2回目の接種を行うものとしています。感染地域へ旅行や出張を予定している人のうち、1970年以降に生まれ、接種の記録のない人は、2回の予防接種(28日間隔)を受けることが推奨されています。

   麻疹のワクチンは、通常MMR(Mumps(おたふく風邪)、Measles(麻疹)、Rubella(風疹))という混合ワクチンとして接種され、 Measles以外の2種類のワクチンが、自動的に同時に接種されます。MMRワクチンは、副作用問題の影響を受けて1990年代以降は接種率が減少したため、麻疹ウイルスに対して免疫を持ってない20代から30代の人口は多いと言われています。明確な罹患歴がなく、ワクチン接種歴が1回以下の方には、合計2回の接種をお勧めします。地域の保健所(Public Health Unit)や薬局が予防接種を提供していますが、幼少期に接種を受けそこねた場合や、集団発生時には公費負担で接種が受けられますから希望される方は、ぜひお問い合わせください。

 今年の6月には、ウィスラーやメトロバンクーバーエリアでmumps(おたふく風邪)の集団発生が起こりました。また、秋から冬にかけて、非常に多くのカナダ人が、温暖な気候を求めて中米や東南アジアへ旅行するような時代ですから、一年を通して様々な感染症のリスクがあることを認識しておかなければなりません。必要に応じて、薬剤師やヘルスユニット、トラベルクリニックに相談するようにしましょう。また、今年も10月下旬からインフルエンザの予防接種がスタートします。冬場を健康に過ごすためにもこちらの注射も受けるようにしたいものです。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

 

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