2018年10月25日 第43号

 20世紀に活躍したノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクは、人々に共感と衝撃を与えた作品『叫び』についてこのように語っています。

 「ある日暮れに立ち止まった欄干に寄りかかり“世界の叫び”を感知した」ムンクのこの作品は《幻聴絵画》と表現されています。画家がとらえるイメージは時に音としてもやってくるのですね。その一瞬の、根底からの声で、自分の核がゆさぶられる。自分の意識している領域よりもっと奥の世界からファンタジーやアートはやってきます。その奥の世界、潜在意識で遊ぶことができる、ノベル・セラピー。

 今月は、千葉県にお住まいのアリサさんが作られた物語「スマイル」をあらすじでご紹介します。

 

 遠くに高い山が見える、澄んだ空気の広い野原の中に小さなたんぽぽの妖精シンディがいた。大嵐の日、シンディのお父さんもお母さんも遠くに飛ばされてしまった。でも、まだつぼみの中にいたシンディは、その場に残った。お日さまや、雲のお兄さんとお姉さんが面白い顔をして笑わせてくれて、夜には星たちが手を振ってくれるのでシンディは一人でも、さみしさをあまり感じることなく過ごしていた。

 ある日、野原に人間の女の子マフィーがやって来た。マフィーは涙を浮かべ、 寂しそうにため息をつくと、シンディの横に腰を下ろした。クルクル巻き毛で、ふわふわほっぺをしたマフィーを見て、シンディーは雲のお姉さんが下りてきたんだと思って、嬉しくて話しかけた。でも実はマフィーは亡くなったお母さんの思い出のブレスレットを失くしてしまい、悲しんでいた。

 小さなたんぽぽのシンディはマフィーを元気にしようと寄り添う。 そしてふたりはブレスレットを探しに出かけた。あちこち探して最後に森に着いた頃、 空には星が光りはじめていた。

 「ブレスレットは、あの赤い星と、青い星と、白い星を繋げたような色なの」

 すると、マフィーの瞳に、口に、喉に胸に、お腹に、そして手にも足にも、空の星と同じ光が輝いていた。「マフィー、いっぱい光ってるよ。」シンディーが教えてあげると、マフィーは自分の体を見つめ驚いた。そしてギューっと自分を抱きしめた。「わたしの見えるもの、おいしいと思うもの、話すこと、感じる心。この体全部にお母さんがくれた宝物がいっぱいなんだ! 一人じゃないんだ」そう気づくのだった。マフィーの顔に笑顔が戻っていった。

 

 ノベル・セラピーで物語を作ってからずっとお話の中にいます、とアリサさんは言います。

 「登場人物はどちらも私。私にとって大事なのは自分の中の宝を抱きしめること。自然の中でリセットすること。ノベル・セラピーのあと、それに気づいてしているうちに、自分と仲良くなれて、前よりももっと自分が好きになれました」

 マッサージ・セラピスト本業の合間に、ライフワークとして、老人施設への訪問マッサージや、子育て中のママたちに五感を使ったアクティビティの場を作ったりと精力的にボランティア活動を行っているアリサさん。ノベル・セラピーを体験して、「元気がない時に『ない』と思い込んでいるけど、誰かに寄り添ってもらって自分を見つめると、すでに『ある』ものに気づける。ここにある幸せを確認できて満たされる。寄り添ってくれる誰かは映し出されたもうひとりの自分。その自分と出会えたときの安心感が、幸せの源になっていくように感じました」と語ってくれました。

 なによりアリサさんは大きな発見をしたそうです。それは、ひとの笑顔が見たくていろいろな活動をしているのだということがわかったこと。めげそうになっても、相手の笑顔を思い浮かべて動くことが出来るようになったそうです。

 「わたしが微笑むためにやっている、そう思えて幸せな気持ちです」と『スマイル』の作者アリサさんは素敵に結びました。

 


Ojha Emu Goto ノベルセラピスト

 日本で雑誌,広告制作者として活躍していたが、98 年にカナダに移民。光の色波動を用いるZenith Omega Healing( ゼニス・オメガ・ヒーリング)のマスターティーチャーヒーラー。月刊ウェブ・マガジン “Cradle Our Sprit! ” www.ojha-angel-vancouver.net / 編集長。しらゆきのゆめ出版代表。

 著書に「アカシック・レコードの扉を開ける〜光の鍵」明窓出版(2010 年)。 ノベル・セラピーのテキストを兼ねた小説集「しらゆきのゆめ」を昨年末出版した。同時に 『しらゆきのゆめ』出版を設立し、バンクーバーの日系社会のみなさまの自費出版をお手伝いさせていただいている。

 今春3月に日本縦断ノベル・セラピーワークショップツアーを行い、現在ノベル・セラピーで誕生した物語を Pod Cast での世界に向けたインターネット配信を準備中。ノベル・セラピーワークショップは随時開催している。自費出版及ノベル・セラピーのお問い合わせはThis email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. まで。 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。