2016年9月29日 第40号

 まずはこんな夫婦の会話を、「このマフラーいい色だね、買おうかな」、「派手すぎよ、いい年して、やめなさいよ」。日本人にしてみれば、ごく当たり前の会話である。でも日本語学習者にしてみれば、確かに分かりにくい。この「いい」にはいろいろな意味があり、日本語教師泣かせの形容詞である。

 まず我々日本人は「良い」と漢字で書いてあれば「よい」と読みたくなる。しかし「です」をつけて「良いです」となると「よいです」よりは、「いいです」のほうが自然である。「よい」は主に書き言葉に使い、「いい」は話し言葉として会話などによく使いますよ、と教えている。

 ここでちょっと困ることがある。普通「重い」や「軽い」などの形容詞の否定形の作り方は最後の「い」を「くない」に変えると教える。「重い」は「重くない」、「軽い」は「軽くない」となる。すると「いい」は当然「いくない」になってしまう。

 うーん、「いくない」はあまりよくないですね。でも、なぜよくないのか、学習者の戸惑いもよく分かる。「よい」と「いい」の使い分け。そして否定形は「いくない」はダメで、「よくない」だけ。こんなこと日本人にしてみれば当たり前のことだが、確かにややこしい。

 そしてまだまだ面倒なことが待っている。よく「おいしい」などに「そう」をつけて「このラーメンはおいしそう」など、推量表現としてよく使う。これを教えるときは「おいしい」の「い」を取って「そう」を付けると説明する。「重い」は「重そう」、「軽い」は「軽そう」である。すると「この本は良い」の「よい」は「い」を取って「そう」を付けるのだから「よそう」となり、「この本はよそう」になってしまう。

 うーん、日本人は習った記憶などないが、なぜかちゃんと「さ」を入れて「よさそう」を使う。でもどうして「さ」が入るのか…。実にややこしい。生徒に「もう嫌です。日本語の勉強よそう」などと言われないようにしなければならない。

 このように「よい」や「ない」などの短い2音節の形容詞は「そう」を付けるときは「よさそう」や「なさそう」のように「さ」が入りますよ、と説明している。

 でも、ある上級者から「濃い」「薄い」の「こい」も「さ」が入りますか、と質問がきた。なかなか鋭い質問である。確かに「濃さそう」もよさそうだが、「濃そう」のほうが多く使われている感じがする。「よそう」や「なそう」は絶対ダメなのに…、困ってしまった。いろいろ例外もあり、言いやすさも大事なのであまり気にしないでね、が精一杯の答えである。

 そしてこの「よい・いい」は漢字が絡んでくると、またややこしい。例えば「彼はよい(いい)人だ」を漢字で書くと、「良い」か「善い」か「好い」かどっち。漢字にはそれなりの意味があると思うが、ひらがな書きの「よい」や「いい」が一番よさそうである。

 また、話し言葉の「彼はいいやつだ」や「いい年して」などは、やはり「よい」よりは「いい」のほうがぴったりする。本当にこの「いい」を教えるのは、いい年した日本語教師としては、かなり大変である。

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