2017年3月9日 第10号

今回は、よく耳にするグルテンについてお話をしたいと思います。今までそんなに気にしなかった商品の表示でも、最近よく目にする 「GLUTEN FREE」の文字。気になっている方もいるのではないでしょうか。グルテンが入っていない食べ物が体にいい、グルテンがアレルギーの原因である、と聞いていても、それについて全く分かっていない人が多いのが現状です。

 

グルテンとは

 グルテンとは特に小麦などの穀物に多く含まれているたんぱく質のことです。小麦だけではなく、大麦やライ麦などにも含まれています。小麦粉に少しのお水を加えて練ると、だんだんと丸くなり、硬くなっていきます。硬くなってできてきたものがグルテンです。グルテンは練れば練るほど弾力がでて、歯ごたえのあるものになっていきます。

 身近にグルテンによって作られている食べ物がいくつかあるのですが、あなたはそれが何かわかりますか? すぐに分かる日本食品に、「麩」や「うどん」があります。麩がグルテンそのものであり、うどんのコシがしっかりしているのはグルテンによるものです。その他、製造過程で小麦が使われるので、醤油にもグルテンが含まれています。北米では、ベーカリーで製造された商品、パスタ、ピザ(生地)、ドーナツなどが代表的です。他にもクリームスープ、グレービーソース、パイクラストなど、原材料に小麦を使った商品に含まれています。

 

グルテンはなぜ体によくないのか

 グルテンが悪いわけではありませんが、人間の体はグルテンを消化するのにとても時間を必要とするため、たくさんのグルテンが含まれている食材を長期間食べることによって、いろいろな問題が引き起こされる可能性があります。それに加えて、グルテンまたは小麦アレルギーに自分では気づいていない人が多く、摂取を減らしたら体の調子が良くなることがよくあります。 

 食べ物は、口の中の唾液と胃酸によって細かく分解され、小腸で栄養を吸収し、ミネラルや水分を大腸にて吸収します。グルテンが多く含まれる食品を食べることによって、消化が遅いグルテンは腸に溜まり、宿便(体内に排出されずに大腸や小腸の壁にこびりついている便)となって残ります。そのため、宿便の存在が腸の栄養吸収の面積を減らし、善玉菌と呼ばれるプロバイオティックを減らし、食事をするたびにガスがたまったり、満腹感を感じることが増えてきます。気が付くと、牛乳を飲むたびにお腹がゴロゴロなるようになりますが、それがLactose Intolerance(乳糖を分解できない体質)症状の始まりです。そして、そのまま食事のメニューやスタイルを変えずに生活していると、あげくの果てにはグルテンや小麦食材に敏感になっていきます。生まれつき小麦やグルテンに敏感な人は、それらがアレルゲン(アレルギーのもと)となり、それを知らずにそのまま食事を進めていくと、クローン病(Crohn's Disease:口から肛門までの全消化器官の慢性炎症炎)となり、完全にグルテンを排除した食事制限を常に強いられることになります。それ以外にも、グルテンによって引き起こされる病気としてシリアック病(Celiac Disease:小腸の異常により栄養吸収が滞り、下痢や栄養失調により体重が増えないなどの問題を起こす病)が有名です。北米では一般に、autoimmune disease (原因は分からないが、免疫システムが破壊される病気)の一つとされ、気づかないまま、死に至る病気ともいわれています。

 

グルテンとアレルギーの関連性

 日本では、5年程前の新聞に、「10人に1人の子供がアトピー性湿疹に悩まされている」という記事が出ていました。アトピー性湿疹は代表的なアレルギー症状であり、主な原因として小麦アレルギーが挙げられます。今まで日本人はお米や微量の小麦を使った食生活をしていましたが、戦後、色々な理由から小麦を多く摂取する食生活に変化してきました。ところが長期にわたって日本人の生活になじんでいない小麦などを摂取し続けることにより、消化不能や消化時間がかかるなどの問題が起こり、最後にはその食材に敏感になり、アレルゲンになっているのではないかと思います。アレルゲンは、体内に常に炎症を起こす要素を発生させるので、アレルゲンの摂取量が多いと、アレルギー湿疹、発疹、喘息、最悪な場合は「アナフィラキシーショック症状」を起こす恐れがあります。北米で多くの症例が報告されている具体例は、ピーナツアレルギーです。 

 なぜ子供が小麦アレルギーやピーナツアレルギーを発症するのか。それは、妊婦が多くのアレルゲン食材を含んだ食品を摂取し、体内の赤ちゃんと常にアレルゲンに反応している血液を共有しているため、離乳食の始まった時期や小学校の給食などでアレルゲンを与えられて、発症する子が出てくるわけです。子供の祖父母の時代には、小麦食材を今のように毎日摂取する機会が少なかったので、妊婦自身がアトピー性湿疹などで悩んでいない限り、アレルギー症状に関して全く気づかない人が多かったはずです。今の時代には、アレルゲンを多く含んだ食材が問題なく摂取され、乳児もアレルゲンを多く含んだ母乳を飲まされ、日本でも離乳食にパン粥や赤ちゃん用クッキーなどが与えられ、小麦アレルギーが発症するわけです。

 現在、自分が何のアレルギーかわからなくても、決まった食材を食べると、ガスがたまったり、頭痛が起こったり、下痢をしたり、腹痛を感じたりと、いつもと違うことが起きたら、まず、その食材のアレルギーではないかと疑うことをおすすめします。疑いのある食材を2週間程摂取しないだけでも、体の調子が改善され、不快感なく生活することができるかもしれません。 

 「グルテンフリー」を始めてみませんか?

 


草野明美 自然医学博士/Naturopathic Doctor

1989年にカナダオンタリオ州に父親の転勤で引越しをし、2002年にトロントにあるCanadian College of Naturopathic Medicine にて修業後、2年ほどバンクーバーの指圧学校で講師/カウンセラーとして自然治癒力の素晴らしさを教えていたが、日本でも同じことができないか一度帰国。その後日本で結婚、出産をし2013年7月に再度家族を連れてバンクーバーに戻ったあと、カルガリーMarket Mall内のNutrition Houseにてサプリメント健康アドバイザーとして勤務。現在は2児の母としてバンクーバーに在住。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。