2017年5月11日 第19号
必須脂肪酸(Essential Fatty Acid)は不飽和脂肪酸(Unsaturated Fatty Acid)であるということを先月号で少しだけお話をしました。不飽和脂肪酸にもいくつかタイプがあるのですが、必須脂肪酸は高価不飽和脂肪酸(Polyunsaturated Fatty Acid)というグループに分類されます。
なぜ必須脂肪酸なのか
単純に説明すれば、私たち(動物)は必須脂肪酸に分類された脂肪分を体内で生成することができないため、食事などで体外から摂取する必要があるからです。必須脂肪酸がなぜ必要なのかといえば、先回のコラムとも重なりますが、ホルモンの生成、ビタミンA, E & Dの吸収、コレステロール値のバランス、脳の働きなど、数多くの働きに活用されるからです。逆に必須脂肪酸の低下による症状は肌荒れ、抜け毛、性ホルモンバランスの崩れ、成長の遅れ、鬱的症状、関節炎の悪化、怪我の治りの悪さなど、免疫力の低下を含むホルモンに関する異常症状です。現在でも、分かり必須脂肪酸の全ての働きが判りきっていないので、摂らないよりも摂っておいたほうが良いとされるサプリメントの代表です。
必須脂肪酸にもいろいろなグループがあります。
Omega 6 (オメガ6):
語源は化学構造で表記した際、オメガと呼ばれる方から数えて6つ目の炭素が二重結合している飽和脂肪酸をオメガ6と呼びます。オメガ6には植物から生成されるものと、動物から生成される2つのタイプがあります。数多くの植物に含まれているオメガ6のことをリノール酸(Linoleic Acid)と呼びます。代表的なものに、サフラワー油、サンフラワー油、ごま油、大豆油など、日本では天ぷら油として有名なオイル群が、このグループに入ります。先回もお話しましたが、あまり高温には強くないので、安易に入手が可能ですが、天ぷらなど高温で使用する料理には不向きです。
酸化していないリノール酸はガンを防いだり、血液がどろどろになるのを弱めたり、炎症を抑えたりすることができる物質、プロスタグランディン1(Prostaglandin1)を生成するため、私たちには、とても大切なオイルなのです。
動物から生成されるオメガ6のことをアラギドン酸(Arachidonic Acid)と呼びます。リノール酸からも生成することができるため、多くの量を生成できない動物などは食事から摂取し生成をするのですが、アラギドン酸からできるプロスタグランディン2という物質はプロスタグランディン1と全く正反対の物質のため、私たちにはあまりうれしいものではありません。ですが、多くのリノール酸を摂取すると、アラギドン酸生成を低下させる仕組みが働き、プロスタグランディン2の増加に悩むことは少ないのですが、ストレスやインスリンが増えると、アラギドン酸生成を促進するという事実も分かっています。そのため極力、植物性のリノール酸を食事により摂取することをオススメします。
また、リノール酸はプロスタグランディン1を生成する際に ガンマ・リノレン酸(Gamma Linolenic Acid - GLA )を作ります。そのため、すでに多くのガンマ・リノレン酸を含んでいる植物、ボラージ(Borage)や月見草(Evening Primrose)のオイルをサプリメントとして摂取することもできます。
Omega 3 (オメガ3):
語源は化学構造で表記した際、オメガと呼ばれる方から数えて3つ目の炭素が二重結合している飽和脂肪酸をオメガ3と呼びます。アルファ・リノレン酸とも呼ばれるオメガ3はお魚、フラックスシード(Flax Seed)に多く含まれています。このオイルは以前リノール酸より生成されると考えられていたので、必須だとはされていませんでしたが、近年の調査で動物は生成することができないということがわかり、摂取しなければ、その素晴らしい用途を活用することができないものであると理解されています。
そしてオメガ6よりも繊細なため、ちょっとした冷蔵庫の明かりや、室温、空気、日光などによって、すぐに酸化してしまいます。そのため、フラックスオイル(Flax Oil)をサプリメントとして摂っているから私は健康よ、なんて言っている人は保存方法に相当気を使わないと、酸化した最も悪いオイルを摂取していることになるので気をつけたほうが良いでしょう。
酸化していないオメガ3はプロスタグランディン1によく似たプロスタグランディン3という物質を生成します。これは炎症を抑え、血液のどろどろ状態を弱めるだけではなく、血液内のHDL(善玉コレステロール)値を増やす働きをも助けるので、食生活で摂取する機会を増やすべきです。特に腰痛、関節痛など炎症による症状に悩まされている方にはオメガ3の摂取をオススメします。
オメガ3もオメガ6も生活をしていく上で必須(Essential)であるということがわかったと思いますが、次回は、もう少し簡単に何をどうしたらよいのか説明したいと思います。
(次号に続く)
草野明美 自然医学博士/Naturopathic Doctor
1989年にカナダオンタリオ州に父親の転勤で引越しをし、2002年にトロントにあるCanadian College of Naturopathic Medicine にて修業後、2年ほどバンクーバーの指圧学校で講師/カウンセラーとして自然治癒力の素晴らしさを教えていたが、日本でも同じことができないか一度帰国。その後日本で結婚、出産をし2013年7月に再度家族を連れてバンクーバーに戻ったあと、カルガリーMarket Mall内のNutrition Houseにてサプリメント健康アドバイザーとして勤務。現在は2児の母としてバンクーバーに在住。