2019年3月7日 第10号

 今回は冷え性を“気”の立場からご紹介したいと思います。日本には“気”という文字を使った言葉が数多く見られます。それ程、先人たちは目には見えなくても、何かエネルギーを感じとって、様々な心のエネルギーを、たった一文字の“気”に集約した先人達の知恵に驚くばかりです。元気、勇気など前向きなエネルギーを感じさせる言葉や内気、陰気、など内向きなエネルギーを感じさせる言葉、気を配る、気を揉む、気に病む、など人々や、周囲に配慮するエネルギーを感じさせる言葉など様々な言葉が思い出されます。ここで共通している事はいずれの言葉も形に現れないけれども、“エネルギー”を内に含んでいる事ではないでしょうか? 目には見えず、形として捉えられず、でも行動する根源に存在するエネルギーなのです。この“気”と言う言葉に内在されているエネルギーと同質のものに焦点を当ててみたいと思います。

 私たちの身体自体にも、形にこそ見る事は出来ませんが、“生命力”と言う目にみえないエネルギーが存在します。その生命力によって身体の臓器や臓腑の機能が維持され、生命自体が維持され、“生きている”と考える事が出来ます。勿論様々な考え方が有ります。でも、今はそのように考えてみて下さい。本気ですか? とシャレが聞こえて来そうですね。“気”は“血”と“水(津液)”と深く連携して、生体を維持していると考えます。気は生体の根源的エネルギーで生体の機能に関連する要素であるのに対し、血、水は生体の構造維持に関連する要素です。何だかとても理解しにくいと思います。基礎的な事柄や定義の説明は、殊更、分かり難いと思います。ここで諦めないで、頑張って読み続けてみて下さい!! 今回はそのうちの“気”の概念と“冷え性”の関連についてお伝えしたいと思います。

 気は常に血や水の先導役を担っています。従って、気の力が弱ければ“気虚”と呼ばれ気の供給ばかりでなく、血の供給も水の供給も障害されてきます。東洋医学では身体的な要素は、精神的な要素と分離して考える事は有りません。精神と身体は常に一体で心身一如と言われる所以です。気の流れが停滞してしまうことを気滞と呼び、順調な流れに反して異なったベクトルで進む時を気逆と呼んでいます。気虚の状態では、エネルギー自体が不足している状態ですので、症状としては身体がだるかったり、気力がない、疲れやすい、などが典型的な症状です。更にエネルギーが不足している状態ですので、冷えやすく、いつも、なんとなく生気が薄れ、薄ら寒くなってしまいます。治療には当然補気剤が用いられますが、人参、茯苓、朮、黄耆、甘草などの生薬が配合された処方が選択される事になるでしょうが、四診によって診断が為され、身体状況にあった処方内容になる事は、申すまでもありません。一方、気滞の症状は抑うつ状態、咽のつかえ感や腹部膨満感が代表的な症状で、いかにも気の流れが留まっている印象を感じ取れるかと思います。のぼせ感と、下肢の冷えが高い頻度で見られます。気の滞りを改善させる生薬には、枳実、厚朴、蘇葉、陳皮をはじめ、柴胡など多岐に及びます。本日の最後の、気逆の話になりますが、本来の気の流れのベクトルが反対方向に向かうので、冷えの症状だけに目を向ければ(他に頭痛・失神、咽が締め付けられる感じ、悪心を伴わない嘔吐など、多岐に及ぶ)手足の先から体幹に向かう痛みを伴う冷えが、特徴的な症状と言えます。冷えのぼせも良く見られる症状です。桂枝、五味子、呉茱萸、川芎などが用いられます。気の疾患に限らず、処方される内容は、個人の状態によって決められますので、時の経過によって病状が変化すれば、当然処方薬も変わって行きます。

 次回の冷え性シリーズ④は“血”についての話題をお届けします。

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

 

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