2017年1月1日 第1号

 今日は“子宮付属器炎”についてお届けします。余り聞き慣れない病名ですが、子宮と付属器の炎症である事は容易に想像がつきます。子宮はご存知の事と思います。“付属器”とは(子宮に)くっ付いた(付属した)臓器と思っていただければ理解しやすいと思います。卵管と卵巣の事です。通常、卵管と卵巣を合わせて子宮付属器と呼んでいます。炎症が、膣から子宮に波及し更に卵管にまで及ぶと、同時に卵巣への(卵管と卵巣は文字が似ていますので注意してお読み下さい)波及も起こり易いので、卵管と卵巣を区別することなく、付属器炎と呼びます。典型的な急性子宮付属器炎の症状は急激な高熱(40度程度)と下腹痛です。

 では、どんな時に感染を受けるのでしょう。第一に挙げられるのが、分娩や流産時です。分娩や流産に際しては、子宮と外界が交通されるので、感染を受ける頻度が高くなるからです。処置や手術の時には消毒面や衛生面で十分な注意が払われ、必要な時には抗生剤などの薬物治療がなされ、感染症対策に配慮がなされています。第二の感染機会は、性行為によって感染する性感染症が挙げられます。性感染症に起因する子宮付属器炎の頻度は、近年、増加傾向に有ります。クラミジアや淋菌を起炎菌とする感染症が若年者を中心に急激な広がりをみせ、社会や学校、家庭での疾患に対する知識の普及が急がれ、性感染症の疾患、及び、予後がもたらす影響の重大性を理解、認識する必要性に迫られています。知識の普及と教育を共有するには多大な時間を要しますので、更なる性教育の充実と実践が試みられています。今後も更なる対策が必要不可欠です。 

 次に、感染経路や治療についてみてみましょう。子宮付属器炎の感染経路は上行性感染が主体です。すなわち、膣炎→子宮頚管炎→子宮内膜炎→卵管炎→卵巣炎→付属器炎→骨盤腹膜炎→腹膜炎→汎腹膜炎と身体の奥深く進行するに従って重篤となり、治療も入院を要するばかりか、内容も大掛かりなものとなります。また、卵管溜膿腫や卵巣溜膿腫(卵管や卵巣に膿が溜まって、腫瘍形成状態になっている場合)には手術の適応も考慮されます。子宮付属器炎が単独で発症する事は稀で、前述の様に、上行性感染なので、途中の臓器も感染を受けている(膣炎、子宮頚管炎、子宮内膜炎、など)可能性が高いと考える必要が有ります。従って、抗生剤等によって炎症を食い止めたとしても、炎症後の癒着や変形など炎症による後遺症が懸念されます。子宮内膜や卵管が炎症の後遺症によって、二次変性や狭窄、変形を生じ、不妊症の原因になったり、子宮外妊娠の発症原因になる事も有りえるのです。

 とても恐ろしい内容になってしまいましたが、すべての患者さんがこのような経過を辿る訳ではありませんので、極度に恐れる必要は有りません。でも、事実として、知識として、知っておくべき事柄と思います。

 分娩や流産に際しては医療機関で処置や手術が行なわれる事が多いので、感染防御には十分な配慮がなされますが、性感染症に関しては、ある意味では“無防備”の状態です。しかし、高熱、下腹部痛を引き起こす前に何らかの症状に気がつくと思います。症状は帯下(おりもの)の増加や出血の混入、異臭、悪臭や色調の変化(膿状、濃黄色調など)、下腹部鈍痛、気分不快…等ですが、その他、症状は多種多様で変化に富んでいますので、早期発見には“いつもと違った症状”に気を配る必要が有ります。過度に過敏になる必要は有りませんが、あまり野放図になる事も、早期発見の機会を逸してしまいます。何かの症状に気が付いても、まァいいか、まァ大丈夫と放置してしまわないで、早期発見、早期治療を心掛けたいものですね。

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

 

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